アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
K01 : 熱の入江 28
-
沈黙の中、至近距離で見つめ合う。
2人の視線が交わって、俺の心臓は最高にドキドキしてるのに、多田さんは全然動じてないみたいに涼しい顔をしてた。
そっと伸ばした手で、宥めるように俺の頭を撫でる。
「駄目だよ。楓くん、かなり酔ってるね」
冗談を軽くあしらうような口調だった。本気にされてないのがちょっと癪で、ほんの少しムキになって反論してしまう。
「確かに結構飲んだよ。でも、酔ってるからこんなこと言ってるんじゃない」
流れるように口をついて出るのは、何の飾り気もない告白。
「俺、多田さんが好きだ」
直後に訪れるのは時間が止まったみたいな静寂で、俺は思わず息を詰める。
勢いに任せてモヤモヤした気持ちをはっきりと言葉にした途端、胸のつかえがするりと溶け出すような感じがして、自分の抱えてる想いの正体がすんなりと納得できた。
俺、この人のことを本気で好きになってるんだ。
多田さんは喰い入るように俺を見つめる。その瞳に、きっとつい今しがた生まれたばかりの熱が小さく揺らめいていることに、俺は気づいてた。
「………楓くん」
ゆっくりと、きれいな顔が近づいてくる。
鼻先が触れ合う程の距離で見つめられて、痛いぐらいに胸が高鳴ってる。
長い睫毛の下から覗く瞳の中でゆらりと煌めくのは、情欲の光に違いなかった。
ああ、なんてきれいなんだろう。
合わさる視線も混じり合う吐息も、何もかもを絡め取られて。
俺はこの人に囚われてしまう。
「キスだけだよ」
聞き分けのない子を嗜めるようにそう言って、多田さんが俺の前髪を指でそっと掻き分けた。
突然上にのし掛かられて、ベッドのスプリングがギシリと音を立てる。
心地よい重みを全身に感じた瞬間、心拍数が最高に上がって、思わず目を閉じたら唇に柔らかなものが触れた。その感触をはっきりと意識するより先に、わずかな隙間を割り開いて舌が入ってくる。
温かく濡れた滑らかな舌先が、生き物のように俺の舌を辿っていく。
「……、ん……っ」
ぞわぞわと小さな何かが身体を這っていく感覚に、声が漏れた。
何これ、気持ちいい。
絡めたくて舌を差し伸ばした途端にそれは逃げていってしまって、今度は優しく歯列をなぞられる。そんな風に焦らされればぞくりと背筋が震えて、合わさる唇の隙間から熱っぽい吐息が零れた。
全身の力が抜けそうで、何かに縋りつかずにはいられない。多田さんの背中に両腕を回して、グッと力を込めて抱きつく。
身体の芯が熱くて堪らない。このままだと何かが融け出してしまう。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
32 / 104