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K01 : 熱の入江 30
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多田さんから与えられる熱っぽいキスで、俺の中に閉じこもっていた欲はするすると魔法のように引き出されていく。
なのに、キス以上のことを拒まれてしまえばどうしようもなく身体が疼いてたまらない。
きっと今なら、この昂ぶりを何回か扱かれただけで果ててしまう。
「……ふ、っあ……」
ゆっくりと、糸を引きながら唇が離れてく。
視界がぼんやりとしていて、目を凝らして焦点を合わせていけば、多田さんのくっきりとした二重瞼がやけに鮮明に目に入る。
ああ、やっぱりこの人の瞳はすごくきれいだな。
改めてそんなことを思いながら、ぬくもりを失った唇が淋しくて、俺はもう一度多田さんの身体を引き寄せる。
額がくっつきそうな距離で、差し出された親指が俺の濡れた唇に触れる。何度か軽くなぞられる度に、また背筋を軽い電流が走ってく。
指を離して、俺の伸び過ぎた前髪をそっと手で払ってから、多田さんは低く囁いた。
「─── 楓くん、これでいい?」
それはまるで、仕方なく義務を努めたみたいな言い方で。
よくなんかないよ。もっと欲しい。
そんな言葉を放つことさえ、躊躇ってしまうような醒めた空気を纏ってる。
「シャワーを浴びてくるから、先に寝てていいよ」
淡々と告げられた言葉に呆然と目を見開く俺から身体を離して、多田さんはそのまま部屋を出て行ってしまった。
意味がわからなくて、振り返りもせず閉められた扉を見つめながらそこに広い背中の残像を思い描く。
火照る身体にひんやりとした空気が触れて、どうしようもなくやるせない気持ちになる。
反応したままのそこは、全然萎えそうになかった。
多田さんは大人の対応をしただけ。俺は適当にあしらわれたんだ。
眠気なんてどこかへ飛んで行ってしまった。目が冴えてとても寝られそうにない。
冷たい布団の中に入って、身体を丸めたまま深呼吸する。
息を吸って、吐いて。昂ぶる体温を持て余しながら、俺はかくれんぼをする子どものように、じっと息を潜める。
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