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K01 : 熱の入江 43
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いつも当たり前のようにこの人の隣で眠り、身体を重ねて、朝を迎える誰かの影を感じながら、俺は挿し込まれる舌を抗うことなく受け容れていく。
口の中で熱を交換しているうちに、会ったこともないその女の人に言いようもない強い感情を抱いてしまう。
その正体に気づいた俺は、昂ぶる身体にゾクゾクと這うような寒気を覚えて、ふと我に返る。
何とも言えない後ろめたさと、そんな罪悪感に包まれた、この想いは。
きっと、少しだけ ─── 優越感。
「……ん、ぅ……ん、ンッ」
しっかりとしがみつくように両腕を多田さんの背中に回して、ぽっかりとした穴の空いた歪(いびつ)な心を押しつけるように、力を込めて強く抱きしめる。
この肌を突き抜けて、ひとつになれればいいのに。
そんな無茶な願いを抱きながら舌を絡ませ合い懸命に腰を動かしていけば、ぐちゃぐちゃと空気を含んだ水音が耳に届いて、一瞬だけ戻ってきた理性はあっという間にドロドロに掻き混ぜられて溶けていく。
2人の境目で鳴ってるその卑猥な音は、もう快感を増長させる旋律でしかない。
「かえ、で……ッ」
余裕をなくした声が聴こえると同時に下からリズミカルに突き上げられて、全身に張り巡らされた未熟な感覚が次々に芽吹いていく。
電気のような快感が、身体の内側をビリビリと駆け巡る。
「あぁ……っ、う、あ……ッ」
目の前がチカチカと瞬いたとき ─── ほんの一瞬、ふわりと浮くような感じがして、意識が急激に遠のいていくのがわかった。
熱い肌を抱きしめる手から力が抜けて、ずり落ちる。
ああ、飛びそう。
「多田さ……、あ……」
か細い声しか出なくて、視界がみるみる白んでいく。
けれど途切れそうな意識の中で力なく名前を呼んだ途端、腰の動きはそのままで多田さんは俺の身体を支えるように抱き直して、耳元に口を寄せてきた。
「かえで」
「 ─── いッ、あ……っ!」
掠れた囁きと共に耳朶に灼けるような刺激を感じて、反射的に背中が仰け反る。浮ついていた意識が一気に呼び覚まされて、ちゃんと身体の中に還ってきた。
多田さんは、わざと俺をこっち側に引き戻したに違いなくて。
それに気づいた途端、ぞわぞわとした強い波の感覚が全身を満たしていく。
ああ、俺はもうこの人に支配されてしまったんだ。
「あ、ぁ……」
ゆっくりと舌を這わされる部分が熱くて、喘ぎ声が漏れる。
見えないけどきっとそこはほんの少し切れてしまってて、それを癒すかのようにそっと咥えられ、ねっとりとした感触に何度も撫で上げられる。
傷口を舐められる度にチリチリとした痛みが走り、それさえも快感に変わって背筋が痺れたように小刻みに震えてしまう。
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