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K02 : 春の海 2
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通話を終えていつの間にか下がっていた視線を前に移せば、並んで歩く美桜ちゃんと涼平の後ろ姿が遠くに見えた。ちょっと電話に出てただけなのに随分距離が空いてるのは、2人がこの電話の内容に気を遣って歩みを早めたからかもしれない。
「ごめん、終わった」
駆け寄って背後から声を掛ければ、振り返った涼平が呆れた顔をして口を開いた。
「楓、マジで愛人やってるわけ?」
「へ? そうだよ。もしかして冗談だと思ってた?」
「いや、そうじゃなくてさ」
濃い色をした新緑が輝くキャンパスの構内は、昼休みで学生がごった返してる。まだ5月だから、きちんと全部の講義を履修する新入生が多い。もう少し経てば、出なくてもいい講義と真面目に出なければいけない講義の区別が付くようになってくるはずで、そうすれば昼休みの混雑もずっと落ち着くだろう。
木陰を通れば吹き抜ける風が頬を撫でていく。爽やかで気持ちいい季節だ。
カフェテリアで昼食を終えて今から次の教室に移動するところで、そういえばこうして3人でいるのって久しぶりかもなあと思う。
涼平は講義に出席するときとしないときのムラが激しくて、大学に来ないときは1ヶ月ぐらいは平気で姿を現さない。それでも単位を落とさないのは、あちこちにいる彼女未満の女の子たちのお陰で講義の情報やノートの入手に事欠かないからだ。この要領の良さは天才的だと思う。
「楓って、相手が結婚してても随分誠実に付き合うんだなって思って。めちゃくちゃ感心してる」
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