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K02 : 春の海 5
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「先生、こんにちは」
「こんにちは」
2人の間に流れるのは、事情を知らなければ気づくことのできないような、微かな緊張感だ。
「 ─── 何歳だっけ」
相手に聞こえないぐらいの距離が開いてから聞こえてきた涼平の素朴な疑問に、美桜ちゃんは律儀に答える。
「もうすぐ45ね」
「へえ。ふた回りも違うんだ。あのおっさん、なかなかやるね」
涼平の茶化すような冷やかしの言葉は先生に向けられたものだったけれど、美桜ちゃんは眉ひとつ動かさずに聞き流している。
あの先生は現代哲学の教授だ。フーコーを専門に研究してるというのを耳にしたことがある。
奥さんも子どももいるあの人が、今の美桜ちゃんの恋人。
見た目は別に悪くないと思う。大学教授の年収は普通のサラリーマンなんかと比べればかなりいいはずで、結婚してたって経済的な余裕はあるのかもしれない。けれどあの人は、美桜ちゃんがいろんなリスクを冒してまで付き合うのに相応しい相手なんだろうか。俺にはよくわからない。
そもそも、他人の不倫の是非なんて言えた義理じゃないんだけど。
「実は俺さ。光源氏みたいなのが理想なんだよな」
唐突にそんなことを言い出す涼平に、俺はぽかんとしてしまう。
いや、確かに素質はあると思うんだけど。
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