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K02 : 春の海 21
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前にしてた居酒屋のホールみたいな接客の仕事とか、そういうみんなと一緒に賑やかにできる職種の方が俺には断然向いてると思う。勉強が苦手ってわけじゃないけど、それを誰かにわかるように教えられるかどうかは、また別の話だ。
『大丈夫。その子、中高一貫校に通ってるから上の高校にそのまま進学するんだ。受験生ってわけじゃないから、何とか合格させなきゃいけないと気負う必要もない。それに』
一旦区切った後に、念を押すように含みを持たせた言葉が聞こえてきた。
『楓は、ただその子の傍にいるだけでいいんだ』
そんなわけで俺は、週2回午後6時から午後9時までその子の家庭教師をすることになった。
郊外の立派な一軒家に住む俺の生徒は、矢橋愁(やはし しゅう)くんという14歳の男の子。
愁くんは一人っ子だ。共働きの両親はいつも帰りが遅いみたいで、俺は授業初日に愁くんのお母さんに会ったきり、家の人とは顔を合わせてない。
よく意味のわからなかった先輩の言葉は、何回かこの家に足を運ぶうちに理解できるようになっていた。
1週間のうち、俺が授業をしない他の4日間を愁くんは学習塾に通っている。つまり、この子は日曜日以外の夜はずっと塾か家で勉強をしているということになる。
それだけじゃない。本人が言うには、日曜日も塾の自習室に通ってるらしい。受験もないのにそんなに勉強してることに、俺は心底びっくりしてる。
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