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K02 : 春の海 22
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俺がこのぐらいのときなんて、自分で言うのも何だけど本当に遊びまくってた。いろんな人と遊んでいろんなことを覚えて、それが楽しくて仕方なかったような時期だ。だから、もしもこんな風に毎日を拘束されてたら、あの頃の俺なら絶対に耐えられなかっただろう。もちろん今だって無理だ。
家庭教師と言っても、俺は勉強を教える必要がなかった。この子は今の時点で既に俺なんかには解けないような難しい問題を1人で解くことができて、今も黙々と答え合わせをしてる。
『勝手に勉強するから、放っておいてほしい。先生は、ただここにいてくれるだけでいいから』
そう言い出したのは、他でもないこの子だった。
3時間の授業中、愁くんが休むことはない。通っている塾のテキストに目を走らせて、問題集を解き、ノートに書き込んでいく。休憩を取ろうと言ったところでなかなか聞き入れてくれない。愁くんは口数が少なくて真面目で、そしてたかが週2回一緒にいるに過ぎない家庭教師には心を開くつもりもないらしかった。
それでも、ちょっとずつ重ねていく会話の中で、俺はこの子が何か事情を抱えてることに気づき始めてた。
「愁くんって、勉強が好きなんだね」
シャーペンが紙を滑る音が一瞬だけ途切れて、すぐにまたさらさらと流れ出す。
「………別に」
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