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K02 : 春の海 23
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愁くんは整った顔をしてる。まだ14歳だからかもしれないけど、男っぽい感じじゃなくてどちらかと言えば女の子に近い繊細な作りの顔立ちだ。この調子だと学校でも口数は少ないんだろうけど、それでも女の子からは人気がある気がする。そうだ、蒼ちゃんと同じようなタイプ。
「へえ。好きなわけじゃないのにそんなに勉強ばっかりしてるなんて、すごいね」
感心してそう言えば、愁くんは今度こそ完全に手を止めて俺を見据えた。値踏みするような眼差しが真っ直ぐに突き刺さる。
真面目で潔癖な子なんだろうなと思う。この子には、自分を取り巻く世界が穢らわしく見えてるのかもしれない。もちろんそこには俺も含まれてる。
「先生って変わってるね」
「そうかなあ。まあ、時々言われるけどね。俺、自分が思ったことはすぐ言っちゃうし、突発的に行動に移しちゃうんだよね。じっとしてるのも子どもの頃からホントに苦手だった。だから愁くんが黙々と勉強をこなしてるの、えらいと思うよ」
少しだけ沈黙が訪れる。愁くんはしばらく口を閉ざした後、おもむろに問いただす。
「先生、もう気づいてるんでしょ」
「何が?」
「先生は、俺の監視役ってこと」
監視役、ね。
今度は俺が黙る番だった。愁くんはつまらなさそうな顔で、言葉を続けていく。
「俺の親はさ、俺が余計なことを考えないように、毎日自由な時間がないぐらい勉強させてんの。だから、別に好きでやってるわけじゃない」
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