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K02 : 春の海 24
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へえ、と俺は心の中で感心する。それをわかった上で反発せずにちゃんと受け入れてるこの子は、やっぱりすごいと思う。芯のしっかりした子なんだろう。我慢強くて賢くて、周りの空気を読みながら自分の身をわきまえようとしてる。でももしかしたら、それってすごく無理をしてるのかもしれない。
それにやっぱりもったいないと思う。だって、このぐらいの年で毎日家と学校と塾を行き来するだけの生活を送るなんてつまらない。この子の世界はもっとキラキラしてたっていいはずだ。
「愁くん、彼女はいないの?」
「いない」
「友達は?」
「いないって」
しつこいな。吐き捨てるようにそう呟いた愁くんが、棘のある花みたいに見えた。意識してるのか無意識なのかはわからないけど、触れたら駄目だよっていうサインを出して、自分を守るために誰も近づかないようにしてる。
でも、俺にはそんなの通用しないけどね。
「じゃあさ、今度一緒に遊びに行こっか。この授業や塾の時間は駄目だから、愁くんが予定のない日曜日にでも。行きたいところがあれば一緒に行くしね。したいこと、何でもいいから考えといて」
そう切り出した俺を、愁くんはびっくりした顔でまじまじと見つめてくる。うん、ツンツンした表情よりそっちの方がずっと年相応でいいと思う。
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