アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
K02 : 春の海 26
-
「え! 1人暮らし?」
びっくりして素っ頓狂な声をあげた俺に、蒼ちゃんがビールジョッキ片手に頷く。俺にとっては大事件なのに何てことのない感じに振る舞われて、温度差を感じてしまう。
「全然知らなかった……」
「うん、言いそびれてたからな」
「蒼ちゃん、そういうの多いよね。結構ショックなんだけど」
ガックリと落ち込む俺を見て、蒼ちゃんは困ったような顔で笑う。
うちの最寄り駅近くの『Lunik Bay』は、平日の今日もそれなりに客の入りが多い。メインストリートから1本細い路地に入ったところにあるこの店は、昼はカフェ、夜はダイニングバーとして営業してる。
薄暗い店内を暖かな色をしたダウンライトが照らし出す。久しぶりに来たここは相変わらずいい雰囲気の店で、落ち着いてるのに堅苦しくなくて、居心地がいい。
店がオープンした高校時代から、蒼ちゃんと学校帰りにちょくちょく利用してたから、ここに来ると俺は何となく高校生に戻ったみたいな気分になる。その頃と違うのは、飲み物にアルコールが入ってること。
高校生から大学生になって、俺自身は何かが大きく変わったというわけじゃない。だけど、高校生を見ると若いなあと思ってしまうのは、ちょっとは大人になったということなのかもしれない。
振り返ってみれば学校で過ごした思い出は懐かしくてキラキラしてる。それは、俺を理解してくれる蒼ちゃんがいつも傍にいてくれたからだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
77 / 104