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K02 : 春の海 27
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「ずっと考えてたんだ。家からだと通学に不便だから」
テーブルの向こうで淡々とそう告げる蒼ちゃんが、傍にいるのに急に遠い存在に思えてくる。
「うん、確かに遠いのは遠いと思うけど」
「不服そうだな」
「当たり前じゃん」
恨みがましい顔になってるんだろうなと自分でも思いながら見つめてしまうけど、蒼ちゃんはもう涼しい顔でビールジョッキを傾けてる。
家から大学まで電車を乗り継いで2時間という通学距離は、蒼ちゃんにとって苦痛だったんだと思う。だからこの2年の間に頑張ってバイトをして、大学から近いところで1人暮らしするためのお金を貯めてたらしかった。
携帯で時々やり取りしてるけど、会うのは随分久しぶりだ。
俺のたった1人の友達。それが、出会った15歳のときから蒼ちゃんの不動のポジション。
そんな蒼ちゃんは今日も変わらずクールな感じだ。感情の起伏を表に出さないから、淡々としてるように見える。でも冷たいわけじゃなくて、本当はすごく優しい。
付かず離れず、絶妙な距離で俺に付き合ってくれる蒼ちゃんのことが俺は大好きで、誰よりも信頼してる。だからこそ、蒼ちゃんからそんな話を唐突に切り出されたことに俺は勝手に淋しくなってた。だって、あまりにもよそよそしいと思う。
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