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K02 : 春の海 28
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聞くところによれば引っ越しの準備も始めてて、もう来週末には今の家を出るっていうんだ。
大学が別々だから高校を卒業してから会う頻度はぐんと減ったけど、それでも俺にとって蒼ちゃんは会いたいときにいつでも会いに行ける、頼りになる存在だった。
物理的な距離が遠くなる。それはそのまま蒼ちゃんと俺との関係にもあてはまる気がした。
「蒼ちゃんって、大事なことはいつもギリギリに言うよね。彼女ができたこととかも、いっつも事後報告だし。何なら別れた後に実は付き合ってたってわかったりするし。そういうの、結構淋しいんだけど」
素直な気持ちを口にすれば、蒼ちゃんは凛々しく整った眉を少し下げて、ちょっと申し訳なさそうな顔になった。
「ごめん」
「ううん、謝ってほしいわけじゃなくて。俺は蒼ちゃんにとってつまんない存在なんだなあって、何かちょっと実感しちゃうっていうか」
「そんなつもりじゃないよ、楓」
うん、わかってる。
普段から口数が少なくて何があってもそうそう表情に出すことのない蒼ちゃんは、たぶんそういうことは考えてない。きっと、何に対しても淡白なんだと思う。
蒼ちゃんは固執とか執着とか、そういう強くてドロドロした感情を持ってない。いつもさらっと勉強も運動もできて、いつの間にかかわいい彼女がいる。それでも俺は知り合った高校1年生のときからずっと、蒼ちゃんが何かに固執してるところなんて見たことがない。
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