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K02 : 春の海 30
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トレイを手にテーブルまでやって来た店員さんが、蒼ちゃんと俺の間にそっとお皿を置く。きれいな黄金色に揚がったチーズスティックフライ。熱々のそれを両手で1本ずつ手に取って、蒼ちゃんに1本差し出しながら口の中に入れてみる。カリカリの衣の中から濃厚なチーズが蕩け出してきて、舌を刺激する温度に思わず顔を顰めた。
「あっつ!」
「火傷するぞ。もうちょっと冷まさないと」
「うん。おいしいね」
「楓、俺の話聞いてる?」
「聞いてる。大丈夫だって」
蒼ちゃんは笑いながら、俺の手から取ったスティックを涼しい顔で食べてる。
そうだ。火傷するかもしれないっていうのはわかってた。でも、俺はしないと思った。だから手を出して、口に入れた。食べてみて、実際これぐらいなら何ともなかった。
まるで遥人さんとのレンアイみたいだなとぼんやり思う俺の前で、蒼ちゃんは小さく溜息をつく。
「別に、わざわざ気を遣わなくても大丈夫だから。彼女なんていないし」
「そうなの? でも、絶対これからできるじゃん。その時は言ってほしいな。わかった?」
念を押す俺に、蒼ちゃんは何も答えない。きっとまた教えてくれなくて、いつの間にか女の子と付き合ってるんだろうなと思う。
蒼ちゃんはすごくモテる。一見無口で取っ付きにくい雰囲気なのに女の子が寄ってくるのは、それだけの魅力があるからだ。
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