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K02 : 春の海 32
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遥人さんとは、うまくいってると思う。愉しくて気持ちよくて、ふわふわ浮き足立った毎日を送ってる。今の関係に不満なんてないし、何の心配もない。
でも、じっと見つめる漆黒の瞳は言葉の続きを促してる。だから俺は耐え切れずについ漏らしてしまう。
「あのさ。その人、えっと。多田さんって言うんだけど」
名前なんて別に言わなくてもいいのに口にするのは、蒼ちゃんにはいつも付き合ってる相手のことを報告してきたからだ。
「結婚してるんだよね」
なるべく軽く聞こえるようにそう切り出せば、蒼ちゃんは持っていたビールジョッキをコトリとテーブルに置いた。
「………それ、付き合ってんのか」
「俺はそのつもり。今は多田さんだけだし」
セフレは全部切ってるから、と言葉を続ければ、蒼ちゃんの表情がみるみる曇り出す。
「楓」
咎めるような口調に、俺はびっくりして蒼ちゃんを見つめ返す。こちらに向けられる眼差しは真剣そのもので、居た堪れなさに胸がぎゅっと痛くなる。
今まで俺が誰と付き合っても、セフレと取っ替え引っ替えエッチしてることをわかってても、蒼ちゃんは何も言わなかった。それでも友達として絶妙な距離感で接してくれる蒼ちゃんの傍が俺には心地よくて、すごく楽しかったんだ。
「 ──── 蒼ちゃん?」
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