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K02 : 春の海 36
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美桜ちゃんとは一度だけエッチしたことがある。涼平とはそういう関係になってなくて、多分向こうにもその気は全然ないとは思う。だけど、別にそうなってもそれはそれで俺にとっては何てことないんだろうなという気がしてる。
レンアイや身体だけの関係には、始まりがあるし終わりもある。両方に共通するのは、自分が求める分を相手からも求められないと成り立たないことだ。そのバランスが崩れてしまえば、もうそこでおしまい。
そんな不安定な関係がずっと続くわけがないということを、俺は身を以て知ってる。
だから、蒼ちゃんは俺にとって特別な人なんだ。
俺と蒼ちゃんには、そういう意味でのスタート地点がない。始まりがないから、終わりもない。蒼ちゃんとは、俺のことを理解してくれる気の置けない友達のまま、緩く長く繋がっていられる。
蒼ちゃんは、言ってみれば俺の最後の砦だ。
見上げた夜空に輝くのは、黄金色のきれいな月。三日月を少し膨らませたような弓形のそれを、俺はただじっと見つめていた。
「蒼ちゃんって、月みたいだね」
そう口にして顔を下げた途端、こっちに向けられた漆黒の瞳が目に入る。月灯りに照らされた蒼ちゃんは本当にきれいだと心底思った。
澄んだ眼差しはいつだってとても優しくて、それが時にはちょっと胸に沁みる。
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