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K02 : 春の海 38
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週末を控えてなんとなく解放感に浸れる金曜日の夜。いつもより遅い時間に鳴った携帯電話に出れば、耳元で響いたのはほんの少しの甘さを含んだ心地いい声だった。
「楓、時間はある?」
遥人さんに会うためなら、ない時間だって捻り出せる。浮かれてる自分がおかしくてちょっと笑いながら俺は返事をする。
「ん、大丈夫」
でももうごはんは食べたよと言えば、じゃあドライブに行こうかと誘われた。
時間はもう午後9時を回ってて、家まで来てもらうのも何だから、最寄り駅のロータリーで待ってたら遥人さんが迎えに来てくれた。
ピカピカに磨き上げられた黒のスポーツカーは、夜空の下でもよく目立ってる。あんまり車に詳しくない俺の知らない車種だった。ボディが描くきれいな流線が街の光を艶やかに反射する。
そういえば遥人さんの運転する車に乗るのは初めてだってことに、今更ながら気づく。うん、なんかちょっと興奮する。
「こんな時間に、珍しいね。どうかした?」
屈んで助手席に乗り込みながらそう言えば、今日も上質のスーツをきっちりと着こなした遥人さんが優しく笑いかけてくれる。そんなことでいちいちドキドキしてしまうんだから、何だかもう色々重症だなって思う。
「楓に会いたくなって」
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