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K02 : 春の海 40
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遥人さんといる、ただそれだけでここは特別な空間になる。
この人はいつもこうして俺の見える世界を変えてくれる。だからこんなに惹かれるのかもしれない。
「これって多田さんの車? かっこいいね」
「独身の時に買ったからね」
何気なく聞いたその答えを、なぜか聞き流せない。こんなところで結婚してるという事実を突きつけなくてもいいのになと思ってしまう。
この車は、ファミリー向けじゃない。じゃあもし次に買い換えるとしたら、この人はどんな車を選ぶんだろう。
例えば、子どもを乗せやすいワンボックスとか。きっとその辺りなんだろうな。
勝手に想像して、勝手に自己嫌悪して。身勝手なことをしてるのは俺なのに、まるで自分が被害者みたいに落ち込むんだ。
この人と過ごすのが楽しくて仕方ないのに、一緒にいれば俺はどんどん嫌な人間になっていく気がした。
「楓、どうしたの?」
黙り込んでると、遥人さんに顔を覗き込まれて俺は慌てて取り繕う。
「ううん、何か新鮮だなあって」
へらっと笑うと、微笑みを返されてホッとする。変なことを考えてるなんて、気づかれたくなかった。
しばらく他愛もない話をしてるうちに、車は高速のランプへと入っていく。この瞬間って、まるで魔法に掛かる前みたいだ。
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