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K01 : 熱の入江 6
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瞳に優しい光が滲んで、それがホントにきれいだなって思った。
もっとこの人のことを知りたい。もっと会いたい。もっと一緒に過ごしたい。
出逢ったばかりの人なのに、なぜだかものすごく惹かれてる。
少しずつでいいから、仲良くなっていきたい。それはもちろん友達としてという意味じゃない。
結婚してたって関係なかった。面倒くさいことにならないように気をつければいいだけだ。
ずっと一緒にいるってわけじゃないんだし。後腐れのない関係なら、俺の得意分野。
でも───多田さんは、きっとすごく手強い。
新婚さんっていうのもあるし、それよりもまず真面目そうで浮気するような人には見えない。そういうところがまた、いいんだけど。
「ね。連絡先、交換しよ?」
携帯電話を取り出しながら、俺は全速力で走った後みたいに胸がドクドクと高鳴ってるのを感じてた。
真夜中のターミナルは終電を逃すまいという人でごった返してて、何だかとてもせわしない。
「俺、こっちなんだよね」
「そうか、じゃあここで」
お互いの家の方向はどうやら反対みたいだった。改札口を通って少し歩いたところで多田さんと向かい合う。
「楓くん、結構酔ってるみたいだけど。1人で帰れる?」
もし無理だって甘えれば、終電だということも構わずに家まで送ってくれそうな感じだった。
でも、今日はもうこれで十分。帰れないほど酔ってないしね。
「大丈夫。ありがと」
多田さんって本当に親切で気配りができる人なんだ。初対面の俺にさえこんな感じなんだから、周りの人にはもっとそうなんだろう。
整い過ぎた顔は、黙ってるとちょっと冷たく見えるけど、笑えばすごく優しい表情になる。
こうして見つめ合うだけで、心臓がドキドキしてしまう。頭がのぼせたみたいにボーッとしてるのは、きっと酔いが廻ってるせいだけじゃない。
思い切って背伸びをして、多田さんの形のいい耳に唇を寄せてみた。
微かに鼻に届く煙草の匂いは、さっき橋の上で抱きしめられたときと同じもの。
きっと、多田さんは喫煙家。俺の中で多田さんの情報がまたひとつ増える。
「俺、多田さんとだったらエッチしてもいいよ。興味があったらいつでも言ってね?」
酔いに任せて、軽い調子で口にしたつもりだった。
なのに、そっと顔を離してみれば多田さんは少し険しい顔をしてる。
冗談は寄せ、なんて怒られるのかと思って俺は一瞬首をすくめる。だけど、多田さんの口から次に出た言葉はそんなんじゃなかった。
「楓くん、もっと自分を大切にしないと駄目だよ」
女の子に言うみたいな台詞。なのに俺は急に居た堪れなくなって、所在なく視線を泳がせる。
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