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K01 : 熱の入江 18
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両親にとって自慢の息子、中澤皐月は俺にとっても誇れる兄だった。
それはもちろん、こんな関係になる前の話。
兄貴に初めてこんなことをされたのは、中学1年生の頃だ。
そのキッカケとなった出来事を思い出そうとすると、今でも胸が苦しくなる。だから、俺はその記憶を強引に頭から追い払って、忘れたことにしてる。
実際俺だって普段の生活を送りながらいつもそんなことを思い出してるというわけじゃない。だからそれってもう、忘れてるのと同じだと思う。
とにかく、それからは何日かに1回、兄貴のを咥えて、俺が自分でしてるところを見せる、そういう奇妙な関係が続くようになった。
でも、そこから先へは進まない。
わけもわからなくて、考えても考えても答えの出ないまま兄貴の気紛れな要求に従うしかない日々は、どれだけ数をこなしたってやっぱり精神的にキツかった。
初めは性欲処理のためかと思った。でも、そうじゃなかった。
『……どうしてこんなこと、するの』
一度だけ、思い切って兄貴にそう訊いたことがある。
その時の冴え冴えとした眼差しと掛けられた言葉を、俺は一生忘れないだろう。
『楓のへらへらした顔がムカつくから』
そうだ。兄貴は俺のことが嫌いで、憎くて仕方がない。ただ、俺に屈辱を味わせることが愉しいだけ。
そんな鉛のようなドス黒い憎しみから逃れたくて、俺は縋ることのできる人を闇雲に求めるようになった。
他人と肌を合わせることでびっくりするぐらい気持ちが落ち着くことがわかるまで、そんなに掛らなかった。
男とも女とも、性別なんて関係なしに誰かれ構わずエッチしてるうちに、俺が兄貴としてることなんて取るに足らないことだって思えるようになった。
俺は別に兄貴とのことがトラウマになってるなんて思ってないし、俺のモラルが緩いのも兄貴のせいだなんて思ってない。
自分の気に入った相手と気持ちいいことができたらそれでいいんだ。本気でそう思ってる。
けれど、たとえば兄貴が俺に求めるこの行為が、単純に性欲を満たすためだったなら。そこに僅かでも好意があったなら。
同じことをしてても、俺はこんなにつらくなかっただろうなと思うことはある。
冷たい空気を閉じ込めるように、兄貴の部屋の扉を閉める。
「楓、今晩も来いよ」
背後から投げられた言葉に、聴こえない振りをした。
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