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吟との出会い ⑵
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「あ…手から血が出ていますよ!?少し、待ってて下さいね。」
そう言うと彼は水道場へと、走って向かう。
何をするのかと、彼をじっと見つめるが、視界が涙でぼやけ、上手く見えない。
すると、彼は、2分程で、帰ってきた。
「手…出して下さい。少し、滲みますけど。」
素直に僕は、手を差し出す。
彼は、僕の、小さい手を、優しく、そっと握り、血が出てる部分に、消毒する。
「いたっ……しみ…、る…」
「我慢、ですよ?頑張って下さい。」
彼は苦笑いしながら、消毒した後、綺麗に絆創膏を貼ってくれた。
可愛いガチャピンの絆創膏…
へぇ…こんな可愛い絆創膏、持ってるんだ。
僕は、笑みを零し、笑った。
「何で、笑ってるんです?」
彼は、どうしたのかと、眉を眉間に寄せた。
「あっ…あの、この、可愛いガチャピンの絆創膏を持っているなんて、意外だな。と思って…。」
確かに、彼は整った顔をしており、抜群なスタイルと誰から見ても思えるだろう。
気も優しいし、皆に好かれるんだろうな。
しかし、こんな可愛い絆創膏を持っているなんて、皆が知ったら、可愛いな。と忽ち、評判も上がるだろう…。
僕にとっては、無縁の話の様だが…。
「そ、そうかな?僕、実を言えば、ガチャピンが好きで、よく、ぬいぐるみとか、買って貰ったんだよ。」
「そうなの…!?そんなに好きなんだね。でも、そういう好きな物を見つけられるって、凄い事だし、良いと思うよ!」
僕の涙は、彼と話す内に自然に止まっていた。そして、僕の表情には、微かに、笑みが浮かんでいた。
「ありがとう!そんな事を言ってくれるのは、君だけだよ。あのさ……また、一緒に話せる?」
彼は、満遍な笑みを見せながら、僕に話しかける。
断る理由なんてない…。
「もちろん!」
僕は、当然、彼にそう告げ笑いかえした。
「あ、えっと、名前、教えてくれる?僕の名前は、夢宮 吟。君は?」
あ……どう、しよう…。
僕は不安になった。
名前を揶揄われるじゃないか…。
もう、そんな思いはしたくない…。
吟なら、揶揄わずに、受け止めてくれる、かな。
「えっと…中川…瞳…。」
僕は、恐る、恐る、口を開ける。
そして、小さい声で、自信無さげに言った。
緊張の音が高鳴る。
「良い名前ですね。これから、友達として…よろしくお願いします!」
良い名前…?
吟、揶揄うんじゃなくて、褒めた…?
僕の心は、一気に晴れ渡る様な気分で、明るくなっていった。
吟が僕に笑顔で、手を差しのべる。
僕は、その手を握り、ぎゅっと力をこめた。
夢宮 吟…。
これが、吟と僕との出会い。
吟は、僕の命の、恩人だ…。
僕の初めての友達…。
吟を大切にしよう。
吟に優しく接していこう。
僕が嫌われないように……。
その日をきっかけに、僕と吟は、出会った公園で、よく遊ぶ様になった。
「同じ学校なら、良いのにな。」僕は、それほど、吟の事を、思っていた…。
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