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次の日、慌ただしさで目が覚めた
王子は・・・もう起きて仕事をしているらしい
「失礼いたします」
誰だ?
どうしよう、今は俺一人なのに
「空様?」
困ったけど仕方がない
返事をしないわけにもいかないし
「どうぞ」
「失礼いたします、今夜のお召し物を」
「うん」
マジか・・・
本当にドレスなんだ
しかも当たり前のように持って来るとか笑えない
「どちらにいたしましょう」
どちらって・・・どれも嫌なんだけどなんて言えないし
しかも何でみんなピンクとか白のひらひらなんだ?
「空、起きてる?」
楓だ
助かった
「うん」
楓が部屋に入ってドレスを見つめた
「後は俺が」
「はい、では失礼いたします」
「うん」
楓と二人きりになって漸く落ち着いた
「あのさ~、このドレスって」
「奏の趣味全開だね」
「はぁ・・・どれでもいいよ」
「わかった、じゃこのピンクのドレスにしよう」
「もしかして楓の趣味も入ってる?」
「ふふっ」
「この世界の人間は意味が分からないよ~、男に女装させるし月が一つだし」
「女装は奏の趣味だから付き合ってあげてね」
「楓もいまいち掴めない」
「そう?」
「そう!」
「その掴めない俺が愛した人は凱なんだけどな」
「・・・・・・・・・・・・」
「凱は優しい人だよ、それを表に出すのが下手なだけ」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「俺達を理解しろと言うのは難しいけれど、せめて信用して欲しいな」
「信用?」
「うん、俺達は空を傷付けたりしない」
「・・・・・・・・あのさ」
「何?」
「俺、ここの生活は気に入ってるよ・・・確かに世界は違うけど平和だし毎日暖かいベッドで眠れる」
「うん」
「でもさ、元の世界に戻ったらまた俺は・・・だからそんなに優しくされると辛いかな」
「空」
「俺にみんなが優しいのはもう一人の空って言う奴にそっくりだからでしょ?もし違う顔の俺がこの世界に来たらきっと無視されて頭のおかしな奴って言われてまた同じような仕事をしているんだろうね」
「返事に困るね」
「なーんてね」
やばい
泣きそうになって思わず顔を背けた
「また話したくなったらいつでも聞くよ、それと・・・王子の事は奏と呼んでね」
「わかった」
「じゃ、そろそろ食事だから着替えたら行こうか」
「うん」
この世界の服にも慣れて来た
何一つ不自由のない生活、美味しい食事
魔法が使えないのは不便だけどそれ以外は不満などない
ただ・・・不安なだけ
いつ元の世界に戻るかわからない
もしかしたら目が覚めたら戻っているかも知れない
それが不安で仕方がない
「空にそんな顔は似合わないよ?」
「でもっ!」
「不安・・・?」
「当たり前だよ・・・もうあんな生活には戻りたくない、でも俺はいつかはまた」
「空は幸せになる人間だよ、だから今はもう考えないで」
「楓」
「俺達も何か出来るのならしてあげたい・・・でも出来ないのがもどかしい」
「いいんだ、何が起きてもそれが俺の運命なんだし」
「じゃ、神様は空の味方だよ」
「味方?あんな生活をしていたのに?」
「これから幸せになれるんじゃないかな」
「・・・・・・・・だといいな」
「行こう」
「うん」
楓と部屋を出て廊下を歩きながら動かない花を見つめた
これがこの世界では当たり前の世界
自分を守りたければ絶対にばれてはいけない
心が少しだけ痛んだけど仕方がないんだ
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