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何となく落ち着かないので部屋を抜け出し、奏を捜した
どこにいるのかもわからない
「空!」
「・・・・・凱」
「ダメだろ、部屋を一人で出ては」
「奏は?」
「大丈夫だ、あいつには掠り傷だろ」
「でも」
「心配するな、すぐに元気になるさ」
「・・・・・・・・・・・・」
「来い」
言われた通り、凱の後ろを歩いた
綺麗な金細工の扉を開けるとピアノがあった
「座れ」
「うん」
「俺の演奏は高いぞ?」
「いくら?」
「冗談だ、空ならいつでもただでいい」
「・・・・・・・・でも俺は」
「空だろ?」
「うん」
「お前の名前は空だ、それは嘘じゃないだろ?」
「そうだけど」
「いいから聴け」
「うん」
凱はとても優しい曲を弾いてくれた
よくわからないけど涙が出そうになった
「ここにいたんだ」
「楓」
「よく二人でここにいたしね、すぐにわかったよ」
「だったな」
さっきの楓じゃない
いつもの楓だ
「あっ、そうだ凱」
「何だ?」
「バンドって何?」
「へっ?」
「奏が凱に聞けって」
「あの野郎・・・でもまぁいっか」
「今ヴォーカルはいないけど聴く?」
「ヴォーカル?」
「奏が歌を歌っていたんだ」
「えっ?」
「で、凱がピアノで俺がギター」
そう言うと楓は凱の演奏に合わせてギターを弾きだした
すごく心に響く音色だった
もしかして前に聴いた歌声って・・・奏?
すごく切ない歌声だったのを覚えている
「すごい・・・よくわからないけど感動したかも」
「そっか、よかった」
「じゃ、俺達の為にそろそろ寝て欲しいかな」
「うん」
「部屋まで送るよ、凱は部屋に戻って」
「ああ、おやすみ空」
「・・・・・・・おやすみ」
凱は本当に優しい人だった
最初に喧嘩した事・・・後悔した
明日謝ろう
「どうしたの?」
「凱がいい人なのはわかった」
「そう」
「じゃ、本当の楓はどっち?」
「本当の?」
「うん、さっきの楓はすごく怖かったし表情も変えないで剣で心臓を突き刺した」
「どっちの俺がいい?」
「今」
「俺の仕事は王子と空を護る事だから王子の指示に従って殺しただけだよ」
「でも、人を殺して何も感じないの?」
「奏が護らなければ空は死んでいた、ましてや王子に怪我をさせた罪は死罪・・・そしてその事に気付かなかった俺を責めている自分がいる」
「あれは気付かないよ、だから楓は責める必要はないと思う」
「優しいね」
「・・・・・・・・・・・・・」
「でもわかって欲しいな・・・この国は平和でも全てが味方では無いんだよ」
「王子でも?」
「王子だからだよ」
奏が王子だから俺も狙われたんだ
もしかして本物の空もいつも危険な目に?
「うん、わかった」
「俺が怖い?」
「ううん、理由がわかれば何となく言いたい事はわかるから」
「よかった、じゃおやすみ」
「おやすみ」
部屋まで送ってもらいベッドに倒れこんだ
俺の世界でも城の中はこんな感じなのかな?
この世界には戦争が無いけれど敵はいる
俺の世界は戦争もあるし敵もいる
俺はどん底の世界からただ貴族達を憎んでいた
でも王子の事は知らない
もし俺の世界の王子がこの世界の奏のような王子だとしたらいつ心を休めるのだろう
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