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奏は公務でいない
俺はもう元気だし楓が心配だった
ベッドから降りて、そっとドアを開けると凱が廊下を歩いていた
「凱」
「空、体はもういいのか?」
「うん、それより楓は?」
「あいつは元気だな」
「そっか」
「もしかしてお前が?」
「何言ってんの?魔法使うなって言ったの誰だよ」
「そうか・・・だよな」
「元気ならいいんだ」
「ああ」
そのまま部屋に戻り、ベッドに入った
間一髪で奏が戻って来た
「どうだ?」
「もう平気」
「そうか」
「のどが渇いたかも」
「わかった」
その時少しだけ意地悪な俺が頭の中で囁いた
「ほら」
「うん・・・あっ、ごめん」
「うまく飲めないな、今ストローを」
「口移しで」
「えっ」
「たぶんストローも無理だと思う・・・力が入らなくて」
「そうか」
そう言って口移しで水を飲ませてくれた
でもただ飲ませてくれただけ
「もういいか?」
「うん、ありがとう」
奏はいつもと変わらない
何事も無かったかのように窓辺で本を読んでいた
伏し目がちな視線と綺麗な横顔
ページをめくる音と、木々を揺らす風の音
「そう言えば今夜あたり嵐が来るらしいから部屋から出るなよ」
「嵐・・・」
「城に居れば安全だ」
「うん」
怖い
この世界にも嵐が・・・・・
そして夕方から雨が降り出した
「奏?」
「空の馬を見てくる」
「ダメだよ!嵐が来るなら外に出ちゃダメ!死ぬよ?」
「えっ?」
「絶対ダメ!俺も何度か死にかけたし」
「嵐でか?」
「うん」
「でもな・・・空の可愛がっている馬だし、やはり見て来るよ」
「奏!」
どうしよう
死んでしまうかも知れない
急いで部屋を出て奏を追いかけた
「奏!待って」
「空」
「俺も行く」
「・・・・・・・・わかった」
雨の中、奏のマントに包まれながら歩いた
「風が出て来たな」
「早くしないと危ないよ」
「だな」
急いで空の馬の様子を見に行き、帰りに強風と大雨で視界を失い動けなくなった
「風が強いからあの木の下へ」
「えっ?」
「来い」
「危ないよ!空からヒョウが降って来るよ、それに気温もマイナスに」
「ん?」
「だから戻ろう」
「大丈夫だ、マントの中に居ろ」
「でも」
嵐だよ?
何をのんきに・・・・・
「寒くないか?」
「うん」
奏に抱き着きながら震えていた
その時、長い前髪が風にあおられた
えっ?
奏・・・・・いつも隠している片目はそのせいなの?
「どうした?」
「奏・・・目が」
「ああ、昔の事さ・・・今は不自由はしない」
「そうなんだ」
「怖いか?」
「ううん・・・平気」
「そうか」
「俺決めた・・・ここで死んでもいいかなって覚悟をね」
「おいおい、嵐ぐらいで死なれたら困る」
「でも」
そして強風の中、凱がやって来た
「やはりここにいたか」
「風が強くて動けなかった」
「だろうな、今なら戻れる」
「ああ」
今ならって・・・・・
もう遅いよ、すぐに気温がマイナスに
「ところで空は何を怖がっているんだ?」
「嵐だよ」
「嵐?」
「嵐は人を殺すから」
「それはお前の世界の話か?」
「うん」
「じゃ、問題ない・・・この世界の嵐は城に居れば大丈夫だ」
「ヒョウは?気温は?」
「そんなものは降らないし、気温も変わらない・・・まぁ、雷は嫌だけどな」
「そうなんだ」
この世界の嵐は俺がいた世界の雨の日みたいなものだった
雨の日は風が強くて雷が鳴る
でもこの世界ではそれを嵐と呼ぶ
不思議だけどそうなんだろう
城に戻り、奏の目の前で濡れた服を脱いだ
「あのさ、空」
「何?」
「・・・・・・・・いや」
そう言えばずっと目を背けてるような
「着替えたら温泉に入って来い、風邪をひく」
「じゃ、奏も行こうよ!体が冷たいよ?」
「・・・・・俺はいい」
「俺、迷子になるかもよ?一人にしてもいいの?」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「一応夫婦なんだし」
「わかった」
温泉に二人で向かい、裸になって飛び込んだ
すごいな
暖かい水がたくさんあるなんて
「空、その痣は」
「縛られた時のかな」
「すまない」
「いいよ、温泉って気持ちいいね」
「そうだな」
「どうしてそんなに離れてるの?」
「そうか?」
「うん」
「まぁ・・・あれだ、空ではないにしても同じ顔だしやはり・・・何と言うか」
「抱きしめてもいいよ?」
「いや、制御出来なくなったら困るからやめておく」
「そんな事考えてるの?」
「それは無いにしても一応男だしな」
「じゃ、せめて隣に」
「ああ」
奏の隣に行き、肌が触れ合う近さまで近付いた
「そう言えばこの世界の言葉は理解できるのか?」
「最初は出来ないよ、わけのわからない言葉で囲まれて俺犯されかけたし、知らない文字ばかりだし・・・だから魔法を自分でかけた」
「成程」
「その時、楓に助けてもらったんだ」
「そう言っていたな」
「もしかして本物の空も言葉がわからなくて困ってるかも」
「・・・・・・・・・・・・」
「でも大丈夫、音楽魔法を使える人がいれば今いる世界の記憶を埋め込めるから」
「いなかったら?」
「何となく理解は出来ると思う、だからそんな顔しないで」
「お前は音楽魔法使いなのか?」
「違うよ、でもほとんどの魔法は覚えてる」
「すごいな」
「でも使う時はないけどね」
「そうか」
身を護る為に・・・いや、いつかあの世界から逃げるために魔法を必死に覚えた
でも結果は何も変わらなかった
「ふぅ・・・あつい」
「出るか?」
「うん・・・あっ!」
何?
今クラっとした
目の前が真っ暗
「空!」
「おかしいんだ、くらくらする」
「のぼせたな」
「のぼせ?」
「気にすることは無い、すぐに治まる」
「うん」
「そのままで」
「えっ?」
もしかして抱き上げられた?
そして部屋まで連れて来てもらい、ベッドに寝かされて頭を冷やされた
「俺、病気なの?」
「いや」
「そっか」
温泉とか知らないし、この世界では毎日お風呂と言うのに入るらしい
俺は毎日川で体を洗っていたし暖かい水は知らない
でも、額の上のタオルは冷たくて気持ちいい
このまま眠ってしまいそうだ
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