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ようこそ、リラクゼーションサロン“Agna Palace”へ
そして、再び…。 (3)
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「ん…」
微かに覚めゆく意識の中、誰かが俺の頭を撫でているのがわかった。
その手は少し骨ばっていたが、暖かく、心地が良かった。
確かめるように見上げると、そこには褐色の肌の手があった。
「あ、カミュ、起きましたか?おはようございます。」
「………っ!?」
意識がはっきりして、俺は愛島の膝を枕にして横になっていたのだと気づく。
何がどうなっているのか全くわからず、咄嗟に身体を起き上がらせた。
「あっカミュ、まだダメです!!」
しかし、愛島に無理やり頭を抑えられ、また膝の上に戻された。
「いきなり動いたら危ないです。それに、疲れたでしょう?たまにはゆっくりと休んでください。」
そう言うと、愛島は心地の良い鼻歌を歌いながら、また頭を撫で始めた。
まるで子供の頭を撫でるかのように、愛おしそうに俺に触れているのが伝わってきた。
「俺は…何をしていた…?」
「えっと…ここに来た後、カミュは今迄溜めていた性が溢れて理性のコントロールが効かなくなっていました。そのままだと、今後に差支えがあると思って、一時的に理性を最小限に引き下げ、カミュには欲望に正直に動くよう、ちょっと魔法をかけました。ただ、途中で意識を失ってしまって、今に至ります。」
「魔法…?…………っ!?」
魔法とは一体何なのか、一瞬そんな疑問を抱いたが、その直後、だんだんと記憶が蘇ってきた。
断片的な記憶ではあるが、自ら愛島にキスをし、愛島の手を使って自らを慰め、中に挿れろと求め…。
一度絶頂を迎えてからは、ほとんど記憶が無かったが、何度も何度も求め、最後には俺が愛島に跨がり、自ら腰を振っていたところまで思い出してしまった。
段々と、鮮明に蘇ってくる痴態の数々にぞっとした。
…しかし、愛島からは、俺を馬鹿にしたり、蔑むような態度は一切見られなかった。
「…貴様は…笑わんのか…?」
「笑う…?何故…?」
「あんな無様な醜態を晒して、可笑しくないほうが可笑しいだろう。…笑いたいなら笑え…。」
「Non、ワタシは、笑ったりしないです。」
「…」
「カミュの理性を奪ったのはワタシの仕業。それに、愛しいアナタがワタシに全てを曝け出してくれたのは、少なからずワタシの事を信じてくれているから。だから、全く可笑しくなんてないし、笑いたいとも思いません。」
優しい口調で、愛島は話を続けた。
「…カミュは今迄ずっと、仕事に追われてほとんど休んでいなかった。だからでしょう、アナタの身体を初めて見た時驚きました。身体を酷使し過ぎてか、ホルモンバランスが崩れていて、あのまま過ごしていたら、カミュの身体は大変な事になっていた。なんでそんなに無理をするんですか…?」
「…しかし、俺はボディメンテナンスは欠かしていない…。」
「Non、確かにマッサージは行っていたみたいでしたが、それだけじゃ全然足りません。それに、マッサージに通っているのは、自分の為ではなく、コンディションを良くする為…つまり、いざという時に動けなくなったら困るから…ではないでしょうか?」
「………」
それはまさに図星だった。
確かに、マッサージは元々好んで通っており、癒やしにはなっているが、それはあくまでも、筋肉の疲れ緩和しないと仕事に集中できないからであって、メンテナンスの一貫に過ぎなかった。
「…カミュ、せめてワタシの前では、本当のアナタでいて。」
「何…?」
「多分、無理をするなと言って無理をしなくなるなら、こんな事にはなっていないと思います。どうしてそんなに無理をするのか、気になりますが、カミュが望まないのなら、ワタシは何も聞かない。
でも、今のままだと身体も心も壊れてしまいます。それ程にアナタの心は、細い糸のように張り詰めている。だからお願い。せめて時にはこうして、ワタシの所に来て全てを曝け出して。弱い部分も、欲望も、全部受け止めます。」
「………勝手な事を言うな…。」
「勝手な事じゃありません。アナタだって、本当はわかっているハズです。」
本当の事…
それは、今の俺が口にする事はできなかった。
何故なら、それを口にしてしまったら、陛下を裏切る事になってしまうから。
しかし、弱音を吐いてはいけないこの現実が俺自身を追い詰めていた事も、事実だった。
「カミュ、ワタシはアナタを愛しています。例えアナタがワタシを愛していなくても、アナタの役に立てる事があるならば、それで幸せです。だから、ワタシがアナタのオアシスになります。」
「………」
「カミュ…?」
その言葉に、何故か俺の目からは涙が溢れ、止まらなかった。
何故、愛島には全てわかってしまうのだろう。
遠い異国に一人訪れて、俺の欲しかった言葉、俺が求めていた肌の温もり、に初めて触れた気がした。
沈黙が続き、悟られぬよう何か喋ろうと思っても、嗚咽を抑えるだけで精一杯で、唇を必死で閉ざした。
僅かに震えるその身体に、恐らく愛島も俺が涙を零している事は気づいていただろう。
だが、愛島はそれには全く触れず、ただひたすら、優しく俺の頭を撫で続けた。
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