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美しい世界に囚われる
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社会人×高校生
(嘔吐、精神)
桜が満開だね
君がそんな台詞を言って微笑む
君が覗く窓の外では
葉っぱ一つない木が立っていて
風が吹いたのか枝がしなやかに揺れている
空はどんよりとして
灰色の雲が空を覆う
君が見ている世界は幻想
醜い世界を見過ぎた反動
君を壊した僕は今の君に
どう見えているんだろう
外に行きたい
ぽつりと君が零した
身体に触ると告げても
君はほっぺたを膨らませて
行くと言い続けた
とうとう君の言葉に折れた僕は
車椅子を借りると
肩に暖かいブランケットをかけて
外に向かう
君は笑ってた
外に出て
外の景色を見て
わぁっと感動する君
何も落ちてきていないのに
桜が散ってるよ
なんて…
君があまりにも嬉しそうに笑うから
そうだね、って返す
風が強く吹いた
突然、君の目がはっと開いて
僕を見つめる
その瞳は怯えるように震えてる
僕から逃げるように
車椅子の上で暴れて
君を抑える僕の手を跳ね除ける君
ぼとりと車椅子から落ちる
動かない足を懸命に動かそうとして
腕で立ち上がろうとする
ずるりずるりと地面を這う君
僕から逃げないで
そう思うのに
君は僕から逃げていく
そっと手をだせば
君は僕を叩いてじたばた
やだ、やめて
こないで、触らないで
叫ぶ君の声が響き渡る
目には涙が溢れて
ぐしゃぐしゃになっていく君
はぁ、はぁ…と君の息が荒れて
過呼吸気味になっていく
落ち着いて、なんて声をかけるけど
君には届かない
浅い呼吸を繰り返して
肺に空気が入っていく気配もない
苦しくなった呼吸を肺が察知して
げほげほと咳が漏れる
背中が丸められて
今にも折れてしまいそう
ひゅーひゅー
ぜぃぜぃ
まるで作り出された音かのような音が
君の喉の奥から吐き出され
ぱ、た……
咳のしすぎで君の唇から
君には似つかわしいものが溢れだす
地面に落ちて
渇いた土を湿らせる
あ…あ……
と声にならない声をあげて
その惨状を見つめる君
びくんと背が跳ねて
またその惨状を作り出す
んぐっ……っ……はぁ……うぇ…………
どこからそんな音がでたの、か
分からないままにそれが続く
暫くして
突然の静けさ
ふ、と天を仰いだかと思えば
その場にどっと倒れ込む
間一髪
君が汚したモノに
君がダイブする寸前で君を支える
ぴく、ぴくと君の手足が動く
目は閉じられているのに
口元からは呻き声が零れる
大丈夫、大丈夫
そう念ずるように君を撫でる
車椅子に乗せて
病室に運んで
ベッドに降ろす
汚れた口元を濡れタオルで拭ってやると
うっすらと目が開かれる
ありがとうと口が動く
最後に微笑んだかと思えば
零れ落ちる彼の名前
僕が君から奪った彼の
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