アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
叶えてあげたい願いは
-
医者×高校生
(喀血)
「外に出たい」
と雪が降りしきる日に君が言った
外の世界を知らない君の口癖となったその台詞
その時は何を考えて
そんな行動に出たか
そんな決断をしたか覚えていない
けれど
最近、君の体調がすこぶるいいから
君の願いに「いいよ」の3文字
ダメと言われなれていた君は
その言葉を一瞬理解せずに
数秒してから
「夢??」
だなんて
あっけにとられた間抜けな顔に笑ってしまった
「夢じゃないよ。最近は調子いいし、ご褒美だよ。」
そう言って
寒くないようにと
君をカーディガンやらコートやらマフラーやらでもこもこにして
邪魔になるだろうと
いつも腕につけていた点滴も
ちょっとの間と外してやる
車椅子を使わずに君を抱く
年は男子高校生だというのに軽々と持ち上がる君
外の中庭の屋根のあるベンチに君を降ろす
君はらんらんとした目でそこから見る風景を眺めてた
俺も横に座って君と同じ風景を見る
雪がしんしんと降って
真っ白な世界に白の粒が溶け込んでいく
いつもは寒いから雪なんて嫌いだとか言っていたけれど
時にはいいかもしれない
不意に君が立ち上がる
立ち上がる力すらなかったはずなのに
ベンチを離れてふらふらと雪の方へ向かう
驚きでその時の俺は止めることを忘れていた
降ってくる雪をてのひらで掬う君
まるで妖精のよう
「…ありがとう……先生。」
そう言ってにこりと笑った次の瞬間
がくんと君が膝から崩れ落ち
胸を抱える君
そこではっとした
君に駆け寄り君を診る
ぜぃぜぃという苦しそうな息遣い
さすがに外はまずかったか
早く病室に戻そうと
君を抱き締めようとした瞬間
君がごほりと咳き込んだ
口から紅いモノが零れ落ちて
白の世界を染め上げる
けほけほとまた咳が漏れて
赤が広がっていく
背を撫でてやって
ピッチを鳴らすと応援を願う
駆けつけてきてくれたスタッフと共に君を病室に運ぶ
それから
俺は君の親と院長に怒られて
君の担当を外された
俺は、もう……
君の病室にはいけない
君を見れない
そう思うと悲しくなって
何度も君の病室を通る度に辛くなる
「先生……」
君の病室を通り過ぎて何歩か歩いたところで
後ろから君の声がした
病室から出ることのない君の声がするはずなんてないのに
声の方向を見れば
君がいた
必死に扉を開けて
病室から出て這いながら俺の方に向かおうとする君
何やってるんだ
そんな身体で
身体に障るのに
俺は踵を返して君の方に向かう
「ちゃんと寝てなきゃダメじゃないか。」
君を支えてそんな台詞
入ってはいけないと
近づいては行けないと
散々言われた君の部屋に
君を抱き上げながら入る
君は前より軽くなっていた
これはあの時の過ちのせいだろうか
「ねぇ、先生……」
君が口を開く
どうして先生変わったの??
どうしてもう来てくれないの??
外綺麗だったのに
嬉しかったのに
先生じゃなきゃ嫌なのに
どうして??
ねぇ、先生、また来て
来てくれなきゃやだよ
僕には先生しかいない、のに
一気にまくしたてられるような君の台詞
嬉しくなかったと言ったら嘘になるし
俺も傍にいたかったと言えたら楽だった
でも、それができない
「そっ、か……」
ベッドに降ろした君の頭を二、三度ぽんぽんとするとそう述べて
何事も無かったように部屋を去る
部屋を出る前にちらりと見た君は今にも泣きそうな顔をしていた
君がそんな顔をするから
君が望むから
俺は君の願いを叶えてやりたくなる
それが君の身体に障ろうと、も
だから、俺はもう君の傍にはいれない
だって
また君に見せていない外の世界を見せてやりたい、とか
また寝れない君と夜、ずっと話してあげたい、とか
君が食べたいという甘いものを一口だけでも食べさせてやりたい、とか
そんなことを思ってしまうんだから
そんなの君の病気を治す担当医として失格、でしょ??
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
120 / 143