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7月2日『うどんの日』②【 END 】
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ちゅる……ちゅる…ちゅる。びちゃっ。
「ぁっつ!」
最後の一息に、勢いがつき、鼻の頭にうどんが、不時着した。
途中まで穏やかに啜っていたせいで、うどんには、たっぷりの汁。
あーぁ…、もう少しだったのに。
ヨツバの格闘具合に、笑いが零れた。
「わっ、笑わないでよっ」
むぅっと頬を膨らませ、再び、うどんへの挑戦を始めるヨツバ。
僕は、くすくすと笑いながら、自分の椅子に戻り、腰を下ろす。
「ヨツバ」
声に、悔しそうに眉を寄せるヨツバの瞳が、僕に向く。
僕は、数本のうどんを箸で拾い、口に含む。
瞳はヨツバを見たままに、吸い込むのではなく、汁から出てきたうどんを箸で掴み、少しずつ口の中へと納めていく。
最後の一口も、箸に取り、口の中へと納めた。
もぐもぐと咀嚼する僕をヨツバは、感動の表情で見つめていた。
同じことをしようとするヨツバ。
「はれ……ん…? ……っ」
じゅるんっ。びちょっ。
「………ッ」
上手く出来ないヨツバは、癇癪を起こし、最後には思いっきり啜ってしまった。
僕は盛大な溜め息を吐き、席を立つ。
キッチンの食器棚から蓮華を持ち出し、席に戻る。
ヨツバの器と自分の器に蓮華を入れる。
ヨツバは、また、きょとんとした瞳を僕に向けた。
椅子に座り、蓮華を持ち、その中へ数本のうどんを綺麗に納めた。
ふーっと息を吹きかけ、蓮華の先から、口の中へと流し入れた。
はっと瞳を開いたヨツバは、同じことをしようとする。
でも…。
不器用なヨツバは、蓮華に乗せること自体が、…出来なかった。
はぁっと深く息を吐く。
自分の蓮華にうどんを乗せ、息を吹きかけ冷ました物を、すっと差し出した。
にかっと笑ったヨツバは、テーブルに手をつき、身を乗りだし、口を開け、あーんと顔を寄せる。
…ここまでする必要もないか。
蓮華のすぐ先まで寄っていたヨツバの口をスルーして、自分の口の中へとうどんを滑らせた。
「りゅんさまっ!」
むっと頬を膨らませ、涙目で僕を睨むヨツバ。
「このままじゃ、いつまで経っても、ヨツバは、綺麗にカレーうどんが食べられないでしょ?」
首を捻る僕に、ヨツバは、自分の丼を手に、僕の横へと移動した。
「いいっ。りゅんさまの傍、離れないから大丈夫!」
ニッと笑ったヨツバは、自分の箸と蓮華を僕へと差し出し、給餌を要求した。
……カレーうどんで、こんな殺し文句が出てくるとは。
悩殺されるとは、思いませんでした……。
もういっそ、このままでいいような気がしてきてしまうのは、僕がヨツバの不思議な魅力に捕らわれてしまっている……、ということなのでしょうね。
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