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どこも行かないよ
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銀がつかつかともう半分走ってるみたいな勢いで進んで行く
学校を出てからずっとこの調子だった
俺の手を強く握っている
「ねぇ、銀…」
「…………」
銀は止まらない
「銀…」
「…………」
まだ銀は止まらない
「銀!!」
「!!」
何度も呼び続けて駅に着いた頃やっと銀はハッとしたように止った
結構速く歩いていたせいかそれとも別の理由でなのか、銀ははぁはぁと肩を上下して呼吸をしていた
振り向いた顔は真っ青で色がなくて不安そうに瞳が揺れてる
こんなに余裕のない銀は初めて見た
「…ぎん……?」
「…………」
視線を彷徨わせて俺と目を合わせようとしない
でも俺の手はキュッと握って離さなかった
何かを一生懸命考えてる
俺がしっかりしなきゃ…
いつも銀にリードしてもらってるんだから…こんな時ぐらい俺がちゃんとしなきゃ…
そう思った
「なぁ…銀、まず家行こう…?」
「…………」
「大丈夫だよ、どこも行かないよ…」
「………」
「帰ろう?」
「………」
どうしたらいいのかなんて全然わかんなかったけどとりあえず銀を安心させたくてそう言いながら手を両手で握って揺らした
昔母さんが泣く俺にいっつもこうやって落ち着かせてたのを思い出す
銀の手は小さく小刻みに震えてた
駅にいた人にはちょっと変な目で見られたけどそんな事気にしてる場合じゃなかった
「大丈夫だよ…」
「…………」
銀がやっと俺と目を合わせて不安そうな目のまま俺を見つめた
「どこも行かないよ」
「………」
俺はそれをじっと見つめ返して声を掛けるしかできなかった
でも銀はそれで落ち着いてくれたのか口を一回ギュッと引き結んでまた歩き出した
まだ話してはくれないけどきっと家に帰ったら話してくれる気がした
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