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兄再来
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「あ、銀帰ってくるの遅かったね、おかえり」
「……は…」
「………?」
うっすら目を開けると銀の顔はもう数センチ先だった
そろそろと銀の見てる方へ首をまわす
「あ、学くんも、いらっしゃい」
「…へっ?…え、あ…お…おじゃま、してます…?」
そこには金さんがいた
いっつも銀が料理するときに着てる黒いエプロンを着て右手にフライ返しを持ってもう片方の手をひらひらと振っている
金、さん…?
一瞬頭が真っ白になったあとぼんっと一気に体温が上がったみたいだった
き…キス…しようとしてたとこ…見られた…!!
「銀、不用心だよ~鍵あいてたよ?」
金さんは銀の家にいることがさも当たり前かのようにあっけらかんとそう言った
「鍵あいてたよやないやろ!?なんで兄貴家におるん!?」
「いや~お兄ちゃん荷物全部なくしちゃった♥」
「はぁ!?」
「いや~あのあとホテル出たらね、もうすっごいおっぱいの大きいかわいー子がいたからその子とラブホに入ったんだけどね朝起きたらパンツ残して後全部盗られちゃった☆」
「………」
「心ごと全部うばわれちった、なんつって☆」
金さんは財布から通帳からカードからケータイまで全部盗られてしまったらしい…
なのにヘラヘラ笑って楽しそうだった
珍しく銀が疲れた顔をしている
「カードとかそういうのは全部止めたんだけどね、まだいろいろ作り直したりけーさつのお世話になるのにここにいた方がいいみたいだからおにいちゃん銀のとこにお世話になろうかなって…」
「アホか!!出てけ!!」
「えーじゃあ学くんとーめーてー」
「もっとあかん!!」
「じゃあ銀の家でってことで…」
そう言うと金さんは楽しそうにリビングの方にスキップしていった
銀が大きな声で叫んでるのに聞こうともしていない…
金さん…
「はぁ…」
銀がガックリとため息をついた
俺は苦笑いしかできない…
「あ、あのさ…でももう金さん何もする気ないみたいだし…」
「………いやや…」
「……で…でもさ…」
「それでも嫌や……」
「……うん……」
ガックリと床に突っ伏す銀がちょっと…って言うかかわいそうだった
「ぎんーホットケーキ焦げたー」
「あんたホンマ何がしたいん!!」
でもなんだかんだ言って銀が晴々して吹っ切れたような顔をしてる
今までため込んでた静香さんとの事とか、金さんとの事とか少しでも手助けができたなら良かったな…
今まで俺は銀に助けてもらってばっかりだったしたくさん迷惑もかけた
レイプされた時も志波との時もずっと…
だから今回の事で何となく銀と対等になれた気がした
俺は銀を「必要」としてるけど銀はただ「好き」なのかもしれないと思ってたんだ…
だから今回の事で俺は銀の支えになれるとわかって嬉しかった
リビングで金さんから焦げたフライパンを取り上げてる銀を見て思う
「えーん、銀やけどしたよー」
「うっさい!!顔面フライパンで叩くで!!」
「えー鼻血でちゃったらかっこわる…」
「そういう話やない!!」
………で、でも…もしかしたら吹っ切れたように見えたのは気のせいかも……
でも少なくとも銀も、そして金さんも前よりもずっと柔らかい表情になっていた
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