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檻の入口
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一台の黒塗りの高級車は、一際スピードを出して走っていた。それに乗っている人達は皆、ラフな格好をしており、車と釣り合っているように見えない。
特に運転手は、パーカーにジーンズという格好なのに、黒い手袋をしていた。彼は後ろにいる二人をミラー越しにチラリと見てから、前に視線を戻した。
「貴方には、心底呆れています」
「酷いな。俺だって、まだ学生を楽しみたかったよ」
そう言った人物は、手を後ろで拘束されている青年を膝に置き額にキスをした。
それを見ながら運転手は深くため息をつき、スピードをさらに早める。
「そうゆう意味ではないのですが……」
「ククっ。いいよ、何?今なら何を言っても許してあげる」
「……。では、お言葉に甘えて」
青年の首筋に赤い跡がついているのをミラー越しにはっきりと見た運転手は、顔を歪めながら口を開いた。
「貴方の心の狭さに呆れていたのです。たかが痴漢で、このような対処をとっていたらこれから先、洸さんが首輪にでも繋がれてしまいそうです」
「今、世界中の女性を敵に回したよ?」
返ってきた返答が気に入らなかったのか、運転手は眉をひそめて後ろに座る人物の目を見た。
「……失礼致しました。ですが、貴方の場合、見知らぬ誰かに触られたということが問題なのでしょう」
「そうだね、うん。君は本当に優秀だよ」
後ろに座る人物は、大いに機嫌が良さそうなのに対して、運転手は全く逆であった。
「やめて下さい。そう言われると、腹が立つんです」
運転手は足に力を入れ、アクセルを踏みこんだ。黒い高級車は、下手をしたら捕まりそうなくらい更にスピードを上げた。
「クククっ。やっぱり嫌だったか、あの名前」
「はっきり言って嫌味にしか取れませんでした。あぁ、これまた過ぎた言葉が……」
「いいよ、別に。幼馴染でしょ?」
チュッというリップ音が車内に響き、運転手は思わず音楽をかけた。
「随分とぶっ飛んだ設定にしたなとヒヤヒヤしましたよ。もっといい考えがあったでしょう」
「その方が色々とやりやすかったんだよ。ね、洸?俺達仲良かったでしょ」
膝に乗せ青年の服の中に手を突っ込む後ろに人物は、笑みを浮かべていた。青年は、目を伏せたまま何も反応しない。
「……ここでは、やめて下さいね」
「何?羨ましい?」
まさぐっていた手を止め、運転手を見ながら青年の服を下から捲る。程よく筋肉のついたしなやかな腹が、ミラーから見えていた。
運転手はそれを一瞥すると、すぐに無表情になった。
「違います。車内の清掃は私が行っているので、汚されると非常に困るのです」
「だってさ、酷いね、洸」
そう言うと、後ろの人物は青年の胸の突起をぎゅっと摘まんだ。それに反応して青年の口は小さく開き、熱い息が漏れた。
「酷いのはどっちですか。わざわざ大学にまで入って……これからの事を考えると洸さんが心配です」
「大丈夫、俺がしっかり躾しておくから。……あげないからね?」
背中に感じる刺さるような視線に、運転手は困った笑みを浮かべた。
ミラー越しに見た人物は、今にも運転手を射殺すような眼力がある。
「はぁ。組の者が今の貴方を見たら卒倒しますよ」
運転手は音楽のボリュームをあげて、真っ直ぐと目的地を目指して進んだ。
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