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ふと目を開けると、豪奢なベッドが目に入った。
ああ、そうだ俺は買われたんだったと、少し考えてから思い出す。朝日が入り込んできて眩しい。
旦那様はどこに行ったんだろうか。
「フィリオ様…」
あれは名前を呼んでもいいということなんだろうか。それともただの戯れか。なんにせよ、昨日のことは思い出すと恥ずかしくなる。腰も痛いし。
「……」
もぞ、と動き、何も身に付けていないことに気がつく。中は…どうやら綺麗にされているらしい。あの人、男を抱いたことあるんだろうか。
近くに畳まれている服を手に、時間をかけて着替える。昨日の服よりは露出が少ないが、これは絶対女物だ。ひらひらしている。足元が寒い。でも無駄な装飾品が少なく、上質なものを使っているのだろう…肌触りがいい。あの人らしいような気もする。
「起きたか」
「……!」
突然声をかけられ、びくっと反応する。
振り替えると、気だるげな様子の旦那様が立っていた。
「…はい、起きました」
「体調はどうだ」
「大丈夫です…」
「そうか。ならばいい。すぐに壊れてはつまらないからな」
「……」
この人にとって俺は、ただの所有物。
飽きられて捨てられないように、俺は精一杯愛想を振り撒かなくてはならない。
「…頑張ります」
「…ほう」
にこ、と微笑むと旦那様は眉をひそめる。
何か間違ったことを言っただろうか。
「昨日無理矢理犯した相手に微笑みかけるとは、したたかなのか、それとも余程の馬鹿か」
「…っ」
むかつく。でも、抗ってはいけない。
旦那様は近づき、ベッドに腰かけた。隣をぽん、と叩かれ、俺はそこに座る。
「従順だな。よく躾られている」
「……ありがとうございます」
「ふん、礼などいらん」
俺を嘲るように笑うこの男を殴ってやりたい。
でも、この体格差だ。返り討ちにされるだろうし、あっけなく捨てられてまた元の生活に逆戻りだ。そんなの、ごめんだ。
「お前は男なら誰でもいいんだろうが、この家に来たからには、生活は改めてもらうからな」
「誰でもいいなんて、そんなことは…」
「違わないだろう?お前は商品として売られていて、日毎違う男にその身を差し出していたんだ。男なら誰でもいい、淫乱だ」
「…っ」
悔しさにぎゅ、と手を握りしめる。でも、抑えないと。大丈夫、俺は、大丈夫だ。
「俺で物足りないとは思えないが、うちの家のものに手を出されたら困るからな。精々大人しくしていることだ」
大丈夫、大丈夫……
「…お前は、俺を悦ばせることだけを考えろ。簡単だろう?ずっと好んでこの行為をしてきたんだ」
「…っざけるな!」
しまった、と思ったときには遅かった。
俺は、目の前の男を殴っていた。平手打ちなんていう可愛いものではない。拳骨で殴ってしまった。結構思いっきり。
「俺は…っ、好きでこんなことするもんか!従順でないと、言うことを聞かないとひどい目に遭わされるんだ!知らないだろ!あんたみたいに恵まれている人は、飢えの苦しさも、焼けるような痛みも、全部知らないんだろ!それなのに俺のこと、知らないくせに…っ、勝手なこと言うなっ!」
はぁ、はぁと息を切らせながら、俺は自分の人生が終わったことを悟った。でも、それよりも、この人に嘲られ、馬鹿にされるのが嫌でたまらなかった。
「…それがお前の本当の気持ちか?」
「…っ、そうです」
「……」
旦那様が手をあげる。殴られる、と思った俺は、目をぎゅっと瞑った。しかし、痛みはやってこない。
「……?」
代わりに、ぐい、と引き寄せられ、唇に柔らかいものが押し当てられた。
「っ?!」
「ふ…、ははは!何を驚いている」
「な、なん、」
「俺は気の強い奴が好きだ。従順で大人しく飼われる奴もいいが、反抗的な方が燃える」
「……」
呆気にとられて旦那様を見つめると、大層悪そうな笑みを返された。なに、この人。
「お前は最初に見たときから、こういう奴なんだろうと思っていた。なのに買ってみたら従順すぎてな…その仮面をひっぺがしてやりたいと思っていた」
「…っ」
じゃあ、俺を怒らせるためにわざと?
「…旦那様は、わざと……」
「おい、名前を教えただろう」
「……フィリオ様」
「そうだ。あと『様』もいらん。それと、試したことは謝らんぞ。隠していたお前が悪い」
わしゃわしゃと頭をなでられる。
変な人。こんな人、今まで会ったことがない。
不思議な感覚だ。
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