アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
第三章:目覚めし悪魔のおそ松兄さん7
-
sideカラ松
「なんだ、早かったな」
目の前にはボロボロになった一松がいた。
十四松に導かれるままに、路地裏に入り込んだが、やっぱり壁があって行き止まりだった。
だが、十四松は走る速度を緩めることなく、壁に飛び込んだ。
その瞬間、壁に波紋が広がり、水を思わせた。
「あり得ない」と頭の片隅では思ったが、今は他に選択肢がなかったのと、「水なら大丈夫」なんて前世由来の半端な言い訳も手伝い、俺は意を決し、目をキュッと瞑って、飛び込んだんだ。
「クソ松、二人を下ろしてやりなさいよ。目回しちゃってるじゃない」
俺の左腕でトド松が、右手腕でチョロ松が、船酔いでもしたかのように、顔色を悪くしていた。
トド松も、いつの間にか目を覚ましていて、でもげっそりして、チョロ松に至っては涙目になっていた。
「え…あ…すまない」
俺は二人をなるべく静かに降ろしてやった。
「ううん。ありがと。カラ松」
チョロ松が無理やりに笑ってくれたので、仕方ないと思う反面、心痛かった。
「クソ松酔いの二人は、そこのソファーにでも座っていな。それにしても、火事場の馬鹿力って本当にあんのね。俺初めて見たよ」
「火事場の…?」
「自分の体重×2を抱えて、よく走ったじゃん。俺としては、おそ松兄さんが覚醒した以上に『あり得ない』現象だな」
ニヤニヤしながら話すいつになく饒舌な一松に俺は、少し戸惑う…
いや、一松は、死神は、こんな奴だった。
弁が立ち、緊急事態に面してもジョークの栄える強者で。
そうだ…こんな口調で話す奴だった。
「なぁに?俺、誉めてんのよ?何とか言えって」
「あ…ありがとう。お前のお陰だな」
「だろ!?俺頑張ったのよ!あの悪魔、邪気増しになったら、やっぱ強くてよ。大変だったぜ。一回齧られたけどな」
「うわー、こんな一松初めて見た」って顔で、こちらを見ているソファーの上の二人に、こいつは気付いているのだろうか。
辺りを見回すと、ボロボロのソファーが一つ、その横に小さなテーブルが一つ。
それ以外に家具らしいものはなく、床には鎌磨ぎをはじめ、いろいろな雑品が散らばっている。
テーブルの上に、書類の山が出来ているところを見ると、どうやら、この亜空間を死神業務の個人事務所に使っているようだ。
猫と遊ぶふりをして、ここで書類と睨めっこしていたんだろうか。
「ところで一松、おそ松の隣に居たのは何だ?」
「あの浮いてた仮面の奴?知らねーな。魔の一種なんだろうけどよ。十四松、知っているか?」
「知らないよ。兄さんが知らないこと、僕に分かるわけないでしょ」
「だよな…」
その時だ。ガクンッと空間が揺れたのは。
「地震!?」
「いや、この空間は地震じゃ揺れねーよ。おそ松兄さんだろ。ここを嗅ぎつけたんだ。おおかた外から頭突きでもしたんだろうよ。この空間、魔は入って来られないんだが、入り口破られたら、お終いなんだよな。最もそれが出来るのは、強力な魔に限られるけどよ」
「おそ松は、どの程度の魔なんだ?」
「俺の怪我具合を見りゃ分かるだろ?神とやり合える程、強力な魔だ。入り口破られるのも時間の問題だな」
「マジかよ…」
「笛は吹いても、ホラは吹かねーよ」
はぁ…と十四松がため息をつく。
「一松兄さん、冗談言ってる場合じゃないよ。カラ松兄さん困っている」
そう言うと、十四松は入り口の方を睨んだ。
「居るね…。やっぱり」
ガクンッとさっきより強く揺れた。
トド松が震えて、チョロ松にしがみ着く。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
23 / 29