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佐藤 竜太 9
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いまだ朝比奈の意図が見えない佐藤はその笑顔をただ見つめることしかできなかった。
「こんなに泣いて…
本当に可愛い人ですね」
可愛いと言われたのは癪だったが、近づいてくる顔にキスされると直感して思わず瞼を下した。
しかし一向に触れる気配のないその感触にゆっくり瞼を上げればあと数センチのところで止まったままだった
「今日は僕からは触れません。あなたもそれを望んでいたでしょう?
もちろん可愛いあなたからのおねだりなら僕は聞くしかありませんが…ね?」
そう言ったでしょう?と笑う朝比奈の“ゲーム”の真意も解った気がして、掌の上で転がされていたのだと気付いた。
キスしたいなら自分でしろ
してほしいならおねだりしろ
つまりはそういうことだ。そうしない限り朝比奈からは手を出してこない。
………ッする、わけ…ないだろ……そんな…恥ずかしいこと……
精一杯の虚勢。わずかに残っていたプライドは言葉にならず、代わりに口をついて出てきたのは──
「……キス…しろ…」
朝比奈を求めるものだった。
クッと小さく上がる口角と、さらに近づく薄い唇。心臓がうるさく鼓動を速めて、やっと触れられる事を喜んだ。
チュッ────
それなのに朝比奈からのキスは短いどころか唇にさえ触れることなく、目尻に軽いリップ音を立てて離れていった。
「なん…で……」
求めていたものと違うと目で訴えるも、朝比奈は言われた通りしましたよと言わんばかりの顔で佐藤を見下ろしていた。
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