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41迫られる決断
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「白竜愛してる」
こうやって愛を囁くあなたの笑顔は美しかった
「白…」
肩に食い込む刃に
痛みではない涙が止まらない
「紅…」
「白竜!」
誰かが白竜を紅から引き離し
どしゅっ
「ぎゃああああーっ!」
紅の右目を突く
「白竜様!」
その隙にかけつけた天狗が白竜に上着をかけ
脱出する
「紅…黒…」
白竜は天狗の腕の中で意識を飛ばした
白竜の屋敷
布団の上に黒の遺体を寝かせる
「黒まで…」
「僕のせいです…」
冷たくなった黒に楊が口付けし
涙を流す
「僕が紅を追い詰めた」
「あなたのせいではありません。黒の宝玉を奪って命を奪ったのは紅です」
拳を握りしめる
「僕は紅も許さない!」
「天狗、白竜様のご容態は?」
「未だに目を覚ましません」
部屋の外で待っていた夏呂久が
天狗に話しかける
「これもあの方の予言ですか?」
震える声に天狗の怒りを感じる
「俺も知らぬよ。予言は白竜様しか聞いていない」
「それと…紅…いやあの化け物は?」
「アレは拐われた」
「アレが?」
「ああ。我らに良く似た異形の者共だ」
「紅様。ご容態は?」
異形の者達に囲まれる
「大事ない…」
右目を押さえ呻く
あの時
「紅様。こちらへ」
何処からともなく現れた異形の者達に抱えられ
連れていかれ
白竜と引き離された
「それよりも白を奪われた事が腹立たしい!」
そして白竜を丸め込み
自分を貶めた
「楊も許さない!」
「紅様ご安心を。我らが王はあなたの元へ必ず取り戻します」
「我らが王?」
「はい。白竜様は我らの新しい王です」
「白竜」
暗闇の中立ち尽くしている白竜の前に
白い着物姿の黒が立つ
「黒!無事でしたか!」
友の無事に喜ぶも
「いや。俺は死んだ」
着物を広げると
胸にぽっかりと空いた穴
「そんな…」
がっくりと座り込む白竜に
「俺は今から輪廻の輪に入る」
黒は話しかける
「次は何に生まれ変わるか分からない」
「ああ…黒…俺は…」
「楊と緑を頼んだ」
振り返りもせず去っていく親友に何も言えず
代わりに
「白竜」
「異界の王」
異界の王が現れた
「緑!」
「蓮…」
報告を受けたであろう蓮が駆け込んでくる
「蓮…黒が死んだ」
黒の遺体に寄り添う楊に何も言えず
「すみません。黒と二人きりにしてもらえませんか?」
「あ、はい!緑、いこう」
「うん…」
酷く落ち込んだ楊を心配しながらも
席を外した
「黒…」
黒の髪をすき
首の逆鱗を見る
「思った通り綺麗な逆鱗です」
2枚しかない逆鱗を撫でる
「この美しい逆鱗を曝した挙げ句可愛い黒を殺したあの子を許さない!」
ぎりりっ
歯を食い縛る
「楊様」
楊の前に現れた異形の者
「どうしました?こんなところまで来るとは」
「申し訳ありません。あなたと白竜様の御身が危険にさらされておりますので警護をと」
「要りません!それより紅を探して下さい!紅の無惨な死体を僕や白竜に見せて!でないと僕の心は収まりません!」
黒の冷たくなった手を握る
「それが…我々の中に裏切り者が生まれました」
「…っ!」
「申し訳ありません。しかし我々には王が必要なのです」
「分かっています!」
だから僕はあの子から奪ったのだ
「異界の王…」
異界の王は無表情で
白竜を見つめる
「あなたの予言が的中してしまった…」
項垂れた白竜に
「まだだ」
異界の王は残酷な言葉を紡ぐ
「まだこの運命は終わらない」
白竜に短剣を渡す
「偽りの王と巫女を殺せ。それしかないのだ」
「俺は…」
「友の死を無駄にするな!私はお前が傷つくのを見たくない!」
異界の王の雰囲気が変わる
より白竜に似た男に
「あなたは…まさか…」
「心優しき我らが子よ」
白竜を抱き締める
「お前が真の王として君臨できることを願っている」
そのまま消えた
「父上…」
続く
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