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42歪忠義
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「ん…」
気が付くと見慣れた天井で
「天狗が連れてきてくれたのだろうか?」
着物も着替えさせられていた
「黒の事も夢だったら良いのに」
腕に残る痣に
夢ではないことを語る
「ふ…ぅ…」
涙を落とす
「黒…俺のせいで…」
カタン
びくっ
不意に手に当たり
床に落ちたもの
「これは夢の中で…」
拾おうとした短剣を誰かが拾う
「どうぞ」
「どなたですか?」
「緑様。蓮様。夕食が遅くなり申し訳ありません」
食堂に食事を持ってくる
「いいえ。それより白竜は?」
「まだ休まれています。お食事はお部屋にお持ちします」
「そうですか…」
「白竜様の心配は無用です。私に任せておいてください」
棘のある言い方に
緑はムッとするが
「緑。天狗の言う通りだよ。僕らでは白竜様をお慰み出来ない。僕らは…黒様達のようになれない…」
「蓮様の仰る通りです。他の事は使用人頭に任せていますので何かありましたらこの鈴を鳴らしてください。それ以外はあなた方に干渉することはありません」
蓮が頭を下げ
天狗は去っていく
「天狗は俺達が煩わしいんだろうね」
「そんなことはないよ。ただ、白竜様と黒様がこうなってしまって混乱しているだけだから」
蓮が慰めるも
「俺には蓮が居てくれれば良い」
緑は天狗に不信感しか抱いておらず
蓮にすがり付く
「蓮が居れば良い」
蓮は目を見開き
歓喜に震える
「緑!僕も…」
くらっ
「蓮?っ!れぇーんっ!」
折角緑が完全に僕の物になってくれたのに
時間が無くなってきた
「何だか外が騒がしい」
外に出ようとした白竜を
「お待ちください!我らの話を聞いてください!お願いします!」
床にひれ伏した異界の住人が引き留める
「あなたの話は聞いた。あの方は…もぅ俺を必要としてはいない…」
俯く
「白竜様…」
触れようとした異界の住人に
「触るな!俺に触れてよいのは天狗と…楊様だけだ!」
逆鱗を光らせ
水の気を滴らせる
「も!申し訳ございません!」
「俺は…もう二人だけになったが竜族の長であり、黄帝の臣下にすぎん!お前達の王は異界の王だ!」
白竜はそのまま進もうとするも
「アレもまた偽りの王です」
異界の住人がとりすがる
「奴もまた王座を守る番人に過ぎません」
「貴様…」
「白竜…様…」
「俺に触れるなと言った筈だ!」
「白竜様。失礼します」
暗く静まり返った室内に
静かに入ると
「天狗」
自分を呼ぶ主の声
「白竜様!お目覚めになりましたか!」
慌てて灯りをかざす
「天狗。すみません。部屋と衣服を汚してしまいました」
床に転がる異界の住人の死体
「いいえ!些末な事です。すぐに片付けます。その前に着替えましょう」
衣類を出し
使用人を呼びに行く
「それにしても…」
外を眺める
「先程の騒ぎは何だったのだろう?」
「緑様。いかがなさいました?」
激しい鈴の音に使用人頭が現れる
「蓮が!蓮が倒れた!助けて!」
「はい!すぐに医者を呼びます!」
「りょく…」
悲鳴のような声を上げる緑に蓮が穏やかに話しかける
「れん!大丈夫?」
不安そうな緑に笑いかける
「ただの貧血だよ。君が心配で、緊張が解けただけ」
「念のために医者は呼びます。あなた方に何か有れば旦那様に申し訳がたちません」
「はい」
緑は頷き
「僕も構いません」
蓮も頷いた
「何やら騒がしい様ですが何かありましたか?」
掃除を頼みに来た天狗が使用人頭の不在を訊ねる
「あ、はい。蓮様が倒れたそうです」
「どこかお加減でも?」
「ご本人は貧血との事です。旦那様には報告しますか?」
「そうですね。私が話しておきます」
何時ものように眉をしかめる
「かような些末な事で白竜様の気持ちを煩わせたくない!」
「夏呂久殿」
「はい、白竜様。お側に」
「この者に見覚えはありますか?」
「…いえ。見知らぬものです」
床に転がる異界の住人の死体に眉を潜める
「この者も俺を王だと呼びました」
「はい。あなたこそが真の王です」
ただひれ伏す
「俺は…いや今は黒や緑だ。黒の葬儀と緑を守る事が今の俺の役目だ」
「はあ…はぁ…」
床に散らばる肉片
がぶっ
ぐちゅっ
肉片を夢中で貪る巨大な蛇
「もう誰も信じない!」
がぶっ
ごくん
「いずれ白も私を求め、来るだろう」
そのまま地界の海へ降りていく
「それまでゆっくり体を休めよう」
まぶたを閉じる
「待っている白…」
「白竜様。失礼します」
掃除道具を持った使用人が部屋に入り
掃除を始める
「お食事がまだでしょう?食堂に用意しておりますのでまずはそちらへ」
「はい。それより先程何やら騒ぎがあったようですが?」
「ああ、はい。蓮様が気分を悪くさせたようで、緑様が騒いでおられました」
「それは良くない!蓮様は大丈夫ですか」
「緑様が大袈裟なだけです。蓮様が少し怪我をしただけでも大騒ぎをされますから」
クスリと笑う
「あなたは何も心配しなくて大丈夫です」
涙の跡を撫でる
「些末な事です」
天狗の眼差しに
「はい…天狗。お前に任せておきます」
白竜は思考を停止した
続く
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