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45異なる友の絆前編
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「白竜様。こちらに控えるは我が同胞、桐にございます」
短い黒髪の癖毛
金色の大きな瞳は猫を連想させる
「この者もまた竜族の警護に加えたく」
深々と頭を下げる異界の住人に
「この者の年令は見た目通りですか?」
白竜が年令を尋ねる
「?…はい。緑様と同い年です」
「未熟な年令なれど、竜族の方々の足手まといにはなりません!」
侮られたと思った桐が顔を上げ
白竜を睨む
「桐!貴様は控えていろ!」
同胞が叱責するも桐は白竜を睨んでいて
「いや、いい」
同胞を押さえる
「白竜様?」
「これぐらいの気概がないと困る」
にっこりと笑い
「警護よりも大事な任を伝える。やれるな?」
白竜が笑みを浮かべる
「はい!」
警備よりも重要な任に張り切って答える
「では緑の友となり、支えて欲しい」
「…はい?」
「緑は友を失い、孤立している。それを支え、守って欲しい。あなたも良いか?」
微笑む白竜は有無を言わさず
「御意。桐はもうあなた様の部下です」
同胞も従う
「桐。お前は?」
「あっ!はい!私もどんな役目でもこなして見せます!」
頭を下げると
「お願いします。そしてこの話は我々だけの秘密としてください」
「御意」
最初はそんな感じで始まった
「初めまして。桐と言います」
緑は警戒しながらも
「宜しく」
手を差し伸べてくれた
利害の一致と白将軍の命令とはいえ
異界の住人への警戒は強く
白将軍以外の竜族も警戒していた
「緑。油断するな。子供とはいえ、あやつも異界の住人だ」
「うん。分かってる」
緑も心を開かなかった
「やれやれ…白竜様も酷な命令を下されたものだ」
同胞が桐に同情の眼差しを向ける
「別に…義兄上方と姉上との腹の探りあいよりはましです」
「そうか。しかしこのままでは護衛もままならんな」
「そうですねえ。桐、この任務は厳しかったですか?」
「しょっ!将軍!」
いきなり現れた白竜に同胞が驚き
立ち上がる
「別に…これからです」
ムッとした表情を見せる
「この間の新しい異界の住人の事件は我々も多くの仲間を失いました。それ以前にあなた方の行いも影響しています」
「でしょうね。だが我々は生きるために人間を補食をしていた。あなた方は我々から人間を守るために戦っていた。それは我々も承知して…」
「天敵同士が組むなどあり得ないからでしょう?」
同胞の言葉を遮り桐が答える
「我らも王の命令がなければあなた方と組む気はありません」
どちらにしろ同胞を殺した相手には間違いない
「ふふふ」
白竜は笑い
「俺も仲間に同じことを言われました」
「今は共通の敵がいるからこそ共闘の姿勢を見せているが、敵がいなくなればまた敵に戻るぞ」
「元々敵だと教え込まれたのに今さら味方だと言われてもな。相手もそうだろう?」
「鳳を殺したやつらとなんて仲良くできないよ」
「我らは王に従うのみです。あなた方の信頼がなかろうと、我らは敵を排除し、あなた方を守るのみです」
「お互いに理解できなければ無理でしょうね」
苦笑し
「所であなた方は動物の肉でも大丈夫ですか?」
「?」
「狩り?」
「はい。武術の訓練も兼ねて」
弓矢を用意する白竜に
黒は訝しげな表情を見せる
「こんな時期にか?」
翠は何かに気付いた様で
「お前まさか…」
「はい。そのまさかです」
「将軍の真意が汲み取れない…」
「僕らもだよ」
鎧を脱ぎ
狩り装束の桐達と
兵士達
「こんな大変な時期に呑気に狩りとは…」
些か不満のある兵士や異界の住人達
黒と翠は深くため息を吐き
「将軍に従え!我らは将軍の兵だ!」
兵士に宣言した
「そこに出たぞ!」
「よし!任せろ!」
あちこちで獲物を探し
狩り取るも
「何だ?小物ばかりではないか…」
捕まえたのは野うさぎや鳥で
「宮中の貴族の狩り遊びでも真似ているのか?」
白竜は意地の悪い笑顔を見せる
「申し訳ございません…」
「情けない限りだ」
黒も呟き
肩に担いだ猪を下ろす
「山に獲物が居ないわけではないのだな」
「それは…異界の住人が…」
「人間が足を引っ張って…」
互いに睨む兵士と異界の住人
「それは俺の采配が悪い…と言うことか?」
穏やかな物言いながら
鋭い視線を向ける
「いえ…それは…」
「お前達の獲物がそれを語っている。でなければこのようなものを出すわけがない」
「申し訳ございません…」
「もう一度行ってこい。そして何故この采配となったか考えよ」
「はっ!」
「何で白竜はこんな采配をしたんだろう?」
馬を走らせ
付いてくる桐を横目で見る
「あなたも将軍の采配にご不満が?」
「別に…僕も一人で十分だってこと」
一人で狩りに行き
獲物を仕留めた黒
「その傲りがあるからこそ将軍はあなたに私を着けたのでは無いですか?」
「………」
「…ガキ…」
不貞腐れた様子の緑に思わず呟いた
「…っ!うるさい気取り屋!」
「俺達も聞かせてもらいたいな。将軍殿」
「何故こんな采配をした?」
翠と黒も白竜に尋ねる
「兵士の訓練のため…ではいけませんか?」
笑顔のままの白竜に
「異界の住人を信用し過ぎではないか?」
黒が不振の眼差しを向ける
「いいえ。俺とてそこまでお人好しではない」
「では?」
「利用できるものは何でも利用しろ。そう言ったのはお前達でしょう?」
「う…」
「それに緑には心から語り合える友が必要だと思いました」
「緑に?」
「緑の破天荒についていくことができて、尚且つ本気で喧嘩を出来る友が」
「もう一度言ってみろ!」
「何度でも言ってやる!ガキガキガキ!」
「お前なんかに何がわかる!心なんか無いくせに!」
互いに取っ組み合い
殴る
「お前達のせいで仲間が…友が死んだ!」
「それならこっちもだ!生きるために狩りをしていた!互いに殺し殺されは生き物の自然な成り行きだ!」
ハアハアと息を吐き
「ガキ!」
「すかし屋!」
そっぽを向き
それぞれ獲物を探すも見つからず
そのまま帰れば
「何だ。お前は貴族の狩り遊びすらできないのか?」
と白竜に詰られ
「白竜に恥をかかせるな!」
と兄に厳しく叱咤されるであろう
「とにかく獲物を探さないと!」
獲物を探す緑を見守っていた桐だったが
「緑!」
突然大声を上げ
飛び付いた
「今度は何だよ!」
いきなり飛びかかった桐に緑は怒りの声を上げるが
「しっ!」
緑の口を塞ぐ
「静かにしてください…」
庇う桐の背中越しに見える異界の住人
「…っ!」
「今のあなたでは敵わない」
桐の額から流れ落ちる汗に
尋常ではない相手だと悟る
ずしん
ずしん
腹に響く音を立て歩く異界の住人には目がなく
ふんふんと鼻をひくつかせることから
から鼻のみの機能だと知り
物陰に隠れ息を潜める
「うん?」
歩いていた異界の住人が足を止め
匂いを嗅ぎ始める
「血の臭いがする」
ふんふんと臭いを嗅ぐ
「しまった…」
桐が怪我をした腕を押さえる
「誰か居るのか?」
異界の住人が近付くなか
「やむを得ない」
桐は短刀を構えた
続く
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