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友達
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論破
狛日
V3育成計画軸
ネタバレ注意
「友達」
そんな安っぽいようで重くのしかかってきた言葉は簡単に僕に突き刺さり、空洞が出来た所からじんわりと温まっていくのを感じた。
僕の冷え切っていた脳味噌にまるで1つの弾丸でも食らったみたいな衝撃を残した。
それから一週間経ち、僕らは別々の道を歩んでいく、はずだった。
「友達なんだからお願いを聞いてもらわなきゃね」
「ん?なんのだ?」
聞いてやるぞと不思議そうに小首を傾げる日向くんはいつものように悪戯な笑みを僕に向けた。
『友達』そのワードを口にするだけで日向くんは微々たるも嬉しそうな反応を示しているような気がした。
表情も以前より柔らかくなって笑顔を見る回数も断然増えた。
それもそのはず、毎日顔を見合わせていれば自ずと変化にもすぐに気づくようになってしまうのだから。
卒業後、日向くんと僕はルームシェアをする関係になっていた。
希望ヶ峰学園を卒業した僕らは、別々の大学へと進学が決まっていたのだが、借りていたマンションが火事になり生憎住まいを失う不運に見舞われた僕は路頭に迷っていた。
ああなんてついていないんだろう、こんなゴミクズみたいな才能の僕が生きてる価値なんてないに等しいよね、
「狛枝、狛枝か?!」
汚なく暗い路地の奥からかすかな光が射し込んだようにみえた。
あれはそうたしか、予備学科の。
つい最近まで予備学科、だった。
いくら突き離してもしつこい位声を掛けてくるし
こんなゴミカスみたいな僕と、僕なんかと友達になりたいなんて言った。彼
僕の『友達』の日向創くんだった。
そんな彼と一緒に寝食を共にする仲になるなんて数年前は思いもしなかった。
そのまま日向くんの狭いアパートに身を寄せることになった。
大きな不運の後には必ず幸運が待っているのだと、思っていたけれど果たしてこれが幸運だったのか僕の腐った才能じゃあ確認する術もないのに。
信じるしかないだろとか抜かす、つまらなくて無個性な何の才能もない、友達は言った。
無責任。
何の確証もない癖に。
絶望的。
どんな不運が待ち受けているかなんてわからないのに。
それでも、
その笑顔が今日も変わらずに僕に向けられていることに不思議と安堵している自分がいた。
そんな日向くんの小さな希望に僕もかけてみようかなんて馬鹿げた未来を思い描いているのかもしれない。
どんな顔をしていいかわからずはにかむことも出来ない僕にくしゃっと笑って頭を撫でてくるんだ。
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