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目の前から消えた
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『飼い主さん見つかりました』
ペットショップに入って目に入ったのは茶色の耳の垂れたうさぎさんではなく貼り紙だった。
ぱちぱちと目を瞬かせてみてもそれは変わらなくて言葉を失う。
「あー、買われたんだな。よかったじゃん、飼い主見つかって。」
隣に立つ木村が状況を理解してボクに言う。
飼い主が見つかった……
売る目的じゃなくて
かわいがる目的で飼ってくれる人が見つかった
みんなじゃなくて
特別な人から愛してもらえるようになった
そういうこと。
喜ぶべきこと。
それなのに、どこか喜べない自分がいた。
うさぎさんに置いてかれた…
そんなわけないのにそんなこと思ってしまう。
うさぎさんはケージに大人しくおさまっていただけで何もしていない。
だからこそ、だから…見つかったんだ、特別が。
此処だっていい場所だっただろうに。
はぁーっと大きめな溜息が聞こえたと思うとぐいっと腕を引かれる。
「!?」
強い力で掴まれてそのままペットショップをでて道を歩く。
「ちょっ、木村…痛い……」
そういうけど、木村は全然聞く気がなくって、答えたのはたった一言。
「いいとこ連れてってやるから。」
いいとこなんてあるものか。
此処はボクの癒しだったんだ。
キミと来ていた場所、だったんだ。
そうだよ、キミと来ていた場所。
そして、店のガラス越しにキミが帰るのが見える場所。
もし、もしだよ??ボクもケージにおさまっていたらこんな気持ち思わなかっただろうか。
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