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15.夜の海。
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「ほらほらっ、折角やし海に足だけでも浸けよっ!」
「友希~ッッ」
僕の手をぎゅって握って、引っ張ってくれたことに心臓がバクバクした。ぐいぐいって引っ張られて波打ち際に連れてかれて、海の水に足が触れた瞬間「ひゃっ」って変な声が出た。
「焼けたらあかんから夜しかこんなんできひんもんなぁ、中村。もう、泳いじゃう?」
「泳ぐ泳ぐ!」
「ほなら、入っちゃえーっ」
「わーい!」
友希と手を繋いでそのまま海にダイブした。ばっしゃーんって顔に海水が掛かって、めっちゃしょっぱくてうえ~ってなった。友希がそんな僕を見て笑う。その友希を見て、僕が笑う。びしょびしょのくせに、僕を指差して笑う。
楽しい。楽しい。楽しい。嬉しい。可愛い。好き。
なんか、涙が出てきた。海の水が目に沁みたのかなんなのかわかんなくて、また涙が出た。
「中村ー楽しいね!」
「うん、めっちゃ楽しい!」
「また来れたらええな」
「うんっ」
友希が僕の背中に乗って亀みたいに泳いだり、プロレスの技かけあって海に投げたり、昼間できんことを僕達はやりまくって、子供みたいに遊んだ。月が海に映ってキラキラと光ってる。
やめた。友希に言うの、やめた。
勿体ないのかもしれない、怖いのかもしれない、友希がどんな反応するのか不安なのかもしれない。結局のところ僕にそう思わせたのはなんなんのかわかんないけど、今がめっちゃ楽しいから、言うのは今やないって思った。
そうやって遊んで、びしょびしょのままホテルに戻って、ホテルの人に迷惑そうに見られたから、鈴木さんを呼んで助けてもらい(この人ほんまなんでもできんな)部屋に帰った。バイバイってエレベーターで言う。一生の別れやないし、明日の朝にはもう顔を合わせるのに、めっちゃ悲しかった。友希が、振り返って僕の頭をぽんぽんと叩いた。
「また明日なー中村。おやすみ」
「おやすみ、友希」
「うん」
扉が閉まる。
「めっちゃ楽しかった!誘ってくれてありがと中村!」
友希がにっこりと笑った。僕はそれだけで泣きそうになった。こんな顔を見られて良かった。ほんまに僕は友希のことが大好きなんや。
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