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27.雨降る二人。
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「あれ?」
少し離れたところに空と腕時計を交互に見てそわそわと体を揺らす女の子一人。友希はちょっと待っててと言い残してその子のとこに走る。え?友達かな?ちょっとだけいい気のしない僕は、ヤキモチなんて醜い心は見せたくないから友希たちから目を逸らした。5分もしない内に後ろから肩を叩かれた。
「ごめんごめん、中村」
「うん・・・」
「なに?どうした?」
「どうもせえへんよ。てか友希こそどうしたん?なんかあった?」
「ああ、俺の友達なんやけど、めちゃ急いでるのに傘がないって困っててん。なんか電車に間に合わんとかで」
「ほんま急に降ってきたもんな」
「うん、せやから傘あげてきた」
「え?」
ほんまや、友希の手にはさっきまであった傘が無い。ぱーをしてその手を僕に見せてからこてんと首を傾げた。
「中村、傘、入れて?」
ばくばくばくばく。僕の心臓って飛び出してへんよね。
友希がこんな可愛い仕草で強烈なことを言うてる。僕はうんうんうんと何回も首を縦に振った。直ぐに答えんと友希がやっぱりええ、とか言い出しそうで怖くて即答。
「あは、中村大袈裟~」
「友希友希っ早く早く」
傘をばっと差して手招きして友希を迎え入れる。こんな日が来るなんて。しかも、友希から相合傘しようって言うなんて!目立つことを嫌う(それは自分がではなく、僕に関してやけど)友希が自分から目を引くようなことをするって言い出すなんて!夢みたいや。
結構雨が強くて傘を差しても体が濡れてしまう。友希が濡れるのは嫌やったから傘を友希の方に傾けようとした。
「中村、風邪引くからちゃんと自分もはいらんと」
「うん」
ぎゅう。友希がしがみ付いてきた。やばい、ほんまに心音が聞こえる。伝わる。バレる。
でも友希は全然普通の顔で僕の腕にしがみ付いたまま今日の学校の出来事を話続ける。珠に周りから僕の名前が聞こえたけど、ぜんっぜん僕の目にも耳にも入らんし、寧ろ今この時間はこの世に僕と友希の二人しかいないんやないかってくらい、この小さな傘の中だけの世界に浸ってた。
時々見上げてくる友希のちょっと潤んだ大きな瞳が綺麗で、そんな俺のふしだらな感情を見透かされるんやないかとびくびくしながら、話に頷いた。
「中村ぁ?聞いてる?」
「・・・うん」
「今日はありがと。ほんま嬉しかったで」
「ほんま?」
「うん。せやから帰ったらサンドイッチ作ったるな」
「まじ?やったぁ」
「ふふふ。ほんまに食いしん坊やねぇ」
ああ、このまま二人だけの世界になったらええのに。
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