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31.俺の立ち位置。
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「おばちゃんも心配しとったで」
「え?なんで?」
「こんな時間に松田くんがおるなんて珍しいって」
「・・・なんで俺の講義の時間知ってんの?」
「さあ?」
この鈍感さ。ほんまいつ犯罪に巻き込まれても不思議やないで。怖い怖い。熱そうに缶コーヒーを手にして口に運んでる。友ちゃんのサンドイッチを開けてやってから、俺も自分の分を口に運んだ。はっきり言って味がせえへん。友ちゃんの動向が気になりすぎて、今なんも感覚が無い。
テーブルに肘を着いて顎を乗っける友ちゃん。溜息の原因は、中村。それは間違いない。やって沖縄から帰ってから友ちゃんは今まで以上に優しくなった。多分他のやつらは感じないくらいの微妙な変化。でも俺は違う。友ちゃんの少しの変化やって、見逃さへん。やって、ずっと、ずーっと見てきたんやもん。
「友ちゃん」
「んー」
「友ちゃん」
「んー?なん?」
「中村やろ」
「え」
分かりやすいくらいに反応せんといてや。傷つくで俺。コーヒーを飲み込む喉が上下するのが見えるくらい大きな音を立てて飲込んだ。
のそりと体を起こしてたけど、今は俺の言葉に驚いて(慌てて?)真っ直ぐ座ってる。
足を組みなおして小さく(友ちゃんにわからんくらい)息を吐いてから、もっかい聞いてみる。
「中村と、なんかあった?」
「・・・なんもないよ。相変わらず中村忙しそうやしね」
「へー」
なんなん、その残念そうな顔。気付いてへんのかね、めちゃくちゃ悲しそうな顔してるって。
「ほなら、どうしたん?俺にも言えんこと?」
「んー、そういうこと、ちゃうけど」
「せやったら、どうしたん?そんな元気ない友ちゃん見てられへんで」
「うん、ありがと」
聞きたくない。けど、聞いてやらんとこの子はずっと、こんな悲しい表情で俺の前におるんや。そんなん耐えられへんやろ?俺!
「中村からなんか言われたん?」
鎌かける。ほんまは心臓がばくばく言うて、口から飛び出しそうなってるけど、全然普通を装って、冷静に聞いてみてから、サンドイッチを口に運んだ。あー、味せえへん。
ぴくりと動いた友ちゃんの眉。もう一歩か。
「な、いつも言うてるやろ?何でも話そうなって」
「うん・・・でも、諒、俺のこと変なヤツって思うと思う」
「今更思わんって。変なヤツって知ってるし」
「ひどー」
「ほら、せやから」
知ってる?ほんまは変なヤツは俺やねんで?友ちゃん。友ちゃんと出会った時からずっとな、ずーっと俺は変なヤツなんやで?
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