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35.社長の悪知恵。
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「松田くんっ!ほんま迷惑ついでにも一つ助けてくれんかな」
「え?」
助ける?
「今日この後あいつとツーショットで撮るはずの子が、トラブルで来られへんくなってな、ほんま、ごめんやけど、松田くん代わりにあいつの横に行ってくれへん?」
「えええええっ?!」
ばしんっっと音がするほど目の前で合掌をした上坂さんが90度はいってんじゃないかってくらい、頭を下げた。わわわっ、ちょっと、社長がそんな簡単に頭下げんといてっ、それも俺みたいな学生にっっ。
上坂さんの突然の打診に俺は慌てて手を振って断る、そして頭を上げてもらうようにお願い。
「ちょ、止めて、頭上げてくださいっ!ほんまに!」
「そうやで、上坂!松田くんは一般人や、そんなん迷惑に決まって、」
「せやから女装して後ろ向きやったらわからんやろ?」
「はあぁあ!?」
今度は鈴木さんが叫ぶ。あまりの突拍子も無い提案に、呆れ果てた様子で、持ってた手帳を取り落とした。
ていうか、俺が一番驚いてる。そんなん、絶対有り得ん!俺がカメラの前に立つなんて、絶対有り得ん!話が飛びすぎて着いていけへん。
「ちょちょちょ、ちょっと、上坂さんほんまに止めてくださいって!そんなん出来るわけないでしょ、俺モデルでもなんでもないんですよ?それに、じょ、女装って」
「大丈夫、松田くんめちゃくちゃかわええから。絶対似合う」
「そういうことや無いです!」
相変わらず論点のずれてる上坂さんは、隣で止める鈴木さんを全く無視して、ずいと俺に一歩近寄る。そんな中でも中村の撮影は進んでいく。
そして上坂さんはこう言うんや。
「ほら、あいつめっちゃ真剣やろ?いつもちゃらんぽらんでお子ちゃまでも、仕事してればあんな顔もできんのやで?でも、隣に来るはずやった女の子がキャンセルなったら、あいつのあの努力ってどうなると思う?」
「え・・・」
「松田くんっ!聞かんでええで!」
「あいつのせいやないとしても、全部水の泡。なー松田くん、あいつ、カメラの前やとかっこええと思わん?」
「・・・思います」
「せやろ?あいつはこれからもっと大きくなってもらう。なれるもの持ってる。せやから、どんなちっちゃな石も俺が取り除いてやらんといかんって思ってる。躓きそうになったら俺が、支えてやろうて思ってる」
「・・・」
「松田くんっ!」
いつの間にか隣にきた上坂さんが、再び俺の肩をがっしりと掴んで片方の手で中村を指差しながら。
そうか、そうなんや。芸能界ってちょっとしたミスが大きな取り返しのつかんことになるんやな。今日の撮影が進まんかったらそれだけ他の仕事に影響があるんや・・・。俺なんかにはわからんもんがいっぱいあんねや。
「・・・今日の仕事がきちんと終らんかったら、中村にとって、マイナス、ですか?」
「もちろん。仕事に穴開けるってこの業界では一番あかんことやからな」
「ちゃうで!松田くんっそんなことまっっったくあれへんよっ!関係ないからっ」
こん時、俺の頭の中では中村の足枷にだけはならん、寧ろ、協力できるんやったら、って考えることが精一杯で、隣で必死に話しかける鈴木さんの言葉は全くと言っていいほど耳に届かんやった。
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