アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
佐伯
-
携帯がポケットで震える。
会社貸与のガラケーだ、彼じゃない。
旨くて有名な食パンを彼に食べさせたくて、ようやく予約が取れた。朝から買いに出たのは、7時に焼きあがるからだ。
7時に店につき、帰途についての。
「おいおい、7時半だぞ、日曜の…」
電話に出て、なにかあったのか?と尋ねると、
「ああ、明日の本部長への説明の資料の打ち合わせ、してなかったでしょう?」
と、しらっと返される。
「どうせ、朝早く起きてるじゃないですか。今、家の前にいてるんですが、出てるんですか?」
出てる。家の中には彼がいる。焼き立てパンを買ってるから、家にはすぐに帰る。が。
「…出てるし、都合悪い。9時でどうだ?」
こんな朝早くにアポもなしで来るほうが悪いと思うのだが、
「いや、それは。カミさんに怒られるんで9時には家に帰らないと」
そんな勝手な、と思いつつ、有名な恐妻家だ、なるほど、と思い、
「じゃあ、とりあえず、そこで待っててくれ」
さて、と。
10分で戻って、彼に食べさせたかった焼き立てパンのおかずが作れない、それでは。
10分で戻って、5分で用意して、この男と喫茶店に行って自分はおいしくもないモーニングでも食べよう、と妥協する。
この男が嫁以外のことに斟酌しないのは有名なことだから。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
6 / 12