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澤木
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「いいから待っとけ!」
大声で怒鳴る彼の声を、会社以外で初めて聞いた。
まあ、会社でも、くだんの営業課長にしか怒鳴ってないけど…。
「いやいや、そういわず。その店ってなかなか食パン予約できないんですよね」
会社で聞きなれた声がする。さっきのインターフォンの、くだんの課長だ。
「言っておくがやらんぞ。俺もやっと買えたんだ。あがるな!あがるなって!!」
上り込もうとしてるのだろう、あ、俺、靴、どうしたっけ?と考えて、
「あれ?えらく若い靴。誰か来てるんですか?」
そのままだったことに気づかされる。
「きてる。甥っ子。だから、あがるなって!人見知りするの。お前には会わせたくないの」
そんな声が聞こえ、甥っ子、と、反芻する。
課長にばれたくはない。ここにいることを。
けれど、甥っ子、か、と、少し、傷ついてる自分があまりに勝手で、布団の中で丸まる。
意思表示も返事もしないくせに、甥っ子と言われただけでへこむなんてダメすぎる。
ああ、靴をかくしとけばよかった。せめて、男のものと思えるような、落ち着いたものを履いてきたらよかった。
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