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佐伯
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トイレだけ、と何度も言うので、しょうがなくトイレにだけ行かせて、靴を履かせて、玄関から追い出す。ドアに鍵をかけ、念のため、チェーンもかけ。
こんこん、と、寝室をノックし、
「悪い、目玉焼きとトーストだけは作ったから、食べといて。打ち合わせに行ってくる…」
ベッドの中で、顔が見えない。布団の中に埋もれて、
「いってらっしゃい、おじさん」
とくぐもった声が聞こえ、いや、あれは、と言い訳をしようとして、言い訳できる何もなくて、
「ごめん、いってくる」
とドアを閉めた。
「お前さあ、日曜の朝とかさ」
コーヒーが来るまでに、部下が用意してきた資料に目を通し、赤ペンで
「こことこことここがおかしい。手直しはあとでするけど、スカイプでよかったんじゃないのか」
と眉を寄せる。
「最近、部長、なかなか立ち上げてくれないでしょ。休みの日」
なにしてるんだか、と、探るような視線をしてくるが、そういえば、彼の帰った夜くらいにしかパソコンを立ち上げてない。スカイプなんてもってのほかだ、部屋の後ろが映りこむ。
「あー、PCの調子が悪くてな。でもじゃあ携帯で見るし」
「携帯は面倒なんです、嫁が嫌がるので」
結局この男にとって、基本はそこなのだ、と思い、じゃあ、と心の中で思う。
自分も、彼を優先したい。
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