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澤木
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いつの間にか眠っていたらしい、目を覚ませば、ベッドに背中を向けて、パソコンデスクで、男はカタカタとなにかを打っていて。
いつ帰ってきたんだろう、どれくらいねむっていたのか、と、壁の掛け時計を見やる。
いままでかたくなに外さなかった腕時計を、佐伯のために、なのか吹っ切るために、なのか、外してから、新しい腕時計を買うことも、他のものをすることもなく、普段は携帯で、それ以外の時は掛け時計を探して時間を見るようになった。
仕事の時はあまり携帯で時間を確認する、というのは格好いいものではないが、連絡の確認にもなるし、なにより、今まで腕にくっきりあった腕時計の痕がうすくなりつつある。それは、あの男を好きだった気持ちが、やっと過去のものになりつつあるのと比例してる。ヘテロを好きになってもしょうがない、と割り切りながら、それでもあきらめられなかった未練がましい自分の過去、だ。
10時20分。
となれば、1時間半は寝てたのか、と、ちょっと驚いて、ベッドから降りる。
「あ、起きたのか。ちょっときりのいいところまでやってしまいたいから、待っててくれるか?11時出発」
背中のまま、気配を感じたのだろう、柔らかな声が飛んでくる。
「うん、コーヒーでもいれましょうか?」
嬉しい、と、これも背中のまま一言。
背中からついと覗けば、表とグラフのオンパレード。
自分の顧客の名前もある。
「本部長資料?」
そう、と、手元の資料とディスプレイを見やり、
「さらっとさ、こういう資料を見て、なんとなく変な数字がわかる人だからな。間違えてたら大目玉」
笑う。
ふうん、と、コーヒーを淹れにキッチンに行き、少しだけ残ってる朝ごはんのコーヒーは自分用にカフェオレにして、男のために新しく一杯分だけ沸かす。
本人ご所望のパンも、一口だけは食べたようで、ちぎった跡がある。
ベランダの布団をわくのを待つ間に取り入れよう、と、キッチン側からベランダに出る。
いい天気だ。
アウトレットよりも、普通にドライブのほうがいい。
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