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佐伯
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車の助手席に彼を乗せ、車を走らせる。
アウトレットに買い物のはずが、混んでるから、せっかくの天気だし、と、山に行くことになった。
空は青く、道はすいていて、助手席には彼。
幸せだ、と、アクセルを踏む。
「運転、疲れたら変わりますから」
そういっていた彼は、カーステレオから流れる古い洋楽を口ずさんでいる。
「よく知ってるな、俺の学生時代の曲だよ」
そういうと、
「兄貴が好きだったから」
という返事に、お兄さんいたんだ、と今更ながら、心内にメモる。
体は隅々まで知ってる、仕事中も見ている、でも、知ってることは少ない。
そんなことに今更ながら、驚く。
当然、社内ネットワークや会社の社員簿を見れば、そして、自分はそれを全部見れる立場だから、知ろうと思えば、調べられる。
でも、それはフェアじゃない。
だから、見てない。
知っているのは、田舎が南の方なことと、親が公務員をしてることくらい。
「お兄さんと、俺、同じ年くらい?結構離れてるんだな」
「あ、ほんとだ、同じ年だ…」
初めて思い至ったような声で、
「でも兄貴の方が老けてるな~。太ってるしはげてきてるし」
笑って、
「俺もそうなるんだろうな」
いやだな、と付け足す。
「太ってもはげても、きっと君は可愛いよ」
本心でそういうと、小さく、
「ばっかじゃねーの」
と照れたようにつぶやいた声が、やっぱりかわいい。
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