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フレッチャー社
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藤原は、綾倉氏の個人的な顧問弁護士である。
彼の家は、代々綾倉家に仕えてきた。
綾倉氏は彼を信頼していて、彼には隠し事せずに何でも話した。
公的な立場を持たない藤原は、グループの重要な会議では、
綾倉氏の席の背後に控え、
彼の付き添いとして参加する。
当然、会議中には発言権はない。
綾倉氏は、後で彼に説明する手間を省いているだけだった。
フレッチャー社の件は、早速、重役会議にかけられた。
出席者たちは、数項目に関する関連資料を提出させることで一致した。
先代と深いかかわりのある会社の存続について、
重役会議では結論が出せなかった。
その最終的な決定権は綾倉氏が持つ。
綾倉氏がそれでも会議で意見を求めるのは、
どういうときに、誰が、どんな風な考え方をするか、把握しておきたいためだった。
翌日、フレッチャー社から、早速、資料が届けられた。
木村は、綾倉氏たちの雰囲気を知りたくて、郵送やメールではなく、社員にもっていかせた。
綾倉氏を喜ばせたことには、使いは先日コピーを持ってきた青年だった。
「君、名前はなんていう?」
資料を届けて、そそくさと帰ろうとする青年を引き留めて綾倉氏は聞いた。
「市川です。市川浅黄(あさぎ)です」
「浅黄?珍しい名前だね。どうだい、もう5時になる。会社に戻らなくてもいいだろ。
今夜の食事に付き合ってもらいたいんだが」
綾倉氏の言葉を聞き、藤原は仕事の手を止め、改めて青年を見た。
確かに、彼は綾倉氏の好みの容姿をしていた。
背は180センチぐらい、髪はやや茶色い、整った顔立ち、
自分がこの部屋にそぐわないことを知っていて、
綾倉氏に誘われたことで、困った顔をしている。
彼は、綾倉氏と食事をしたい人間が、どれほどいるか知らないのだろう。
綾倉氏に投資を依頼するためにアポイントを取りたがる人たちに、
しばしば断りの連絡を入れている藤原は、少し申し訳ない気持ちになりながら、
高級レストラン「ウォルトンズ」に二人分の席を予約した。
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