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人形の君8
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「面会終了の時間です」
外はもう薄暗くなっていた。
「もうこんな時間か…毎日ありがとな。」
「……お礼なんて…いいよ。また来るから。」
右足骨折。全身を打撲していた。
肋が少し折れていて全治3~4ヵ月だと言われた。
入院して1週間が立った。
もう何週間か入院だと医者に言われた。
後ろから声が聞こえた。
「お友達ですか?毎日来てくれるなんていい人ですね。」
看護師だろう。そんなことが聞こえた気がした。
誰かにいい人だと言われたのは初めてでたとえ気のせいだとしても嬉しかった。
次の日、何時ものように病院に行った。
病室に入るといつもは僕がいる所に別の人がいた。
最初は部屋を間違えたと思った。
だが、何度確認しても君のいる部屋だった。
僕に気づいたのかこちらを見て軽く会釈した。
僕もそれにつられて会釈した。
「あれ?来てたのか。いつもより早いな。」
笑顔で君が言った。
「…うん。やることが早く終わったから…。」
僕はじっと僕がいるべき場所にいる人を見る。
「あっ…こいつ、俺の彼女。」
「…は、はじめまして。相羽咲夜(アイバネサクヤ)です。」
声が少し震えていた。
清楚でとてもおとなしそうな子だった。
「……はじめまして。」
どす黒い感情を表情に出さないように挨拶する。
「二人とも会うのは初めてだもんな!」
そう言って彼女のことを話し始めた。
出会った場所や学校での思い出。
僕にはその一つ一つが胸に刺さった。
話を聞いている間僕はどんな顔をしていたんだろうか。
嫉妬に狂いそうで仕方がなかった。
僕のいた場所に平気で座っている。
目の前にいるこの女がどうしようもなく憎くて仕方がなかった。
僕は君がこんなにも好きなのに。
君は僕のことを見てくれない。
こんなにも君のことを想っているのに。
それでも仕方が無い。
仕方ないんだ。
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