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人形の君10
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「……11時23分。ご臨終です。」
無機質な部屋に医者の声だけが響いた。
外に出て君がいる病室に向かう。
声を殺しながら涙を流していた。
僕はその隣に座りただ君の背中を撫でることしかできなかった。
その日から段々君は痩せていった。
病院にいる間も、家に帰ってからも、
何を作っても食べようとせず部屋に篭ったままだった。
「…お願いだから、何か食べて?何が欲しい?」
ドアの外で呼びかけた。
返事はなかった。
「………君がいないと僕は…どうすればいいの?」
鍵のかかったままの部屋をじっと見つめた。
次第に瞼が重くなってきた。
昨日から寝ていないことに気づき、横になった。
床は冷たかった。
ふと目を覚ますとベッドにいた。
どうやってここまで来たのだろうと考えていると君が部屋に入ってきた。
「……。」
何も言わないが、なんとなく言いたいことが伝わった。
「お腹空いてない?」
次の日何気ない日常が始まる。
そう思っていた。
裁判所から書類が届いていた。
中身は借金の支払い催促だった。
零がいくつも並んでいた。
目の前が真っ暗になった。
弁護士に相談して結果的には相続放棄した。
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